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【令和5年度沖縄平和賞シンポジウム】嘉数真理子医師が登壇しました!【後編】 

up 2024.04.03

行動することで人生が変わる ~沖縄から世界へ~ ジャパンハート

2023年12月23日、歴代沖縄平和賞受賞団体による「令和5年度沖縄平和賞シンポジウム」が開催されました。
沖縄平和賞は、平和を希求する「沖縄のこころ」を世界へ発信し、 国際平和の創造に貢献することを目的として、平成13年に創設されました。 沖縄と地理的・歴史的に関わりの深いアジア太平洋地域の平和の構築・維持に貢献する活動を行っている個人・団体を2年に1回表彰しています。今回、本シンポジウムにて、第7回沖縄平和賞受賞団体としてジャパンハートこども医療センターで活動する医師の嘉数真理子氏(沖縄県出身)が講演を行いました。その様子を前半、後半に分けてお届けします。

身の回りの問題や世界で起こる問題を自分事として捉え、「今自分たちには何ができるのか」ということを考える機会となれば幸いです。

ジャパンハートの活動

ジャパンハートという団体は、日本発祥の国際NGOとして2004年に小児外科医の吉岡秀人が設立しました。もともとはミャンマーから活動を開始し、カンボジア、ラオスに活動を広げていきました。また、ジャパンハートは沖縄県内にてコロナウイルス感染症の際にクラスター支援として100名以上の看護師を派遣しました。
2014年に沖縄平和賞を受賞。2020年4月以降2022年9月末までに新型コロナウイルス感染症緊急支援として、全国485名のスタッフを派遣。2021年11月、沖縄県宜野湾市に独自で濃厚接触者隔離施設を開設し、自治体や周辺医療機関との連携のもと、2022年9月末の閉所までに計40名(入院日数のべ323日)の要介護濃厚接触者を受け入れました。
その甲斐もあり昨年、沖縄県と大規模災害時における協定を結びました。これはコロナウイルス感染症のみならず、災害時などに医療団体が活動支援に入れるようはたらきかけています。

カンボジアの状況

カンボジアでは人口が、日本の1/8(1600万人)程度で平均年齢が約26歳です。GDPも順調に伸びていて経済発展が著しいです。非常に子どもが多く、人口の1/3を占めています。また、カンボジアには悲しい歴史があります。40年ほど前に起きたポルポト政権の際に知識人の多くが亡くなったのです。人口の1/4が亡くなったといわれています。その際に医療体制および社会体制が崩壊してしまいました。
周辺国は発展していきましたが、取り残されていたのがカンボジア、という現状でした。
そのため、午後から医師が不在であったり、多額の請求をされたりと医療不信となり、いまだ民間医療が根強いです
小児医療に関しても、5歳未満の死亡率は日本の10倍程度です。小児の治療施設も不足していて、保険制度も子どもにはありません。基本的に、お金がない人はチャリティーの病院で最低限の治療のみで、がんなどの高度な医療は提供されていない状況です。

カンボジアの小児がんの現状

カンボジアでのワクチン接種は現在8-9割提供することが可能となり、感染症亡くなる子どもが減少した一方、がんを含む慢性疾患が問題となっていて、推定患者は年600-700例いるとされていますが、診断がされているのが半分程度で多くの方が亡くなっています。
そのため、私たちはこども医療センターを作る前に2016年に拠点として、成人の貧困層の方々を診られるように40床の病院をプノンペン郊外に開設しました。その当時から子どもの来院者が多く、初めは治療が難しい場合は、日本の病院に搬送する方針を取っていましたが、莫大な費用と限られた患者の診察のみとなってしまうことから、2018年の8月に小児病棟をオープンしました。そして他院で治療できない小児固形がん(神経芽腫、腎腫瘍、肝腫瘍等)を中心に化学治療を行い、日本の小児外科専門チームによる手術を開始しました。まだ小さい病院でありますが、アジアの小児拠点病院となり、優秀な医療者を育てる教育病院となることおよび2030年には現地スタッフによる運営を目標としています。今は、現地100名ほどのスタッフが勤務し、日本人はそのうちの20名だけでドクターも5名のみ日本人で、基本はカンボジア人のスタッフが8割となり病院運営を担っています。私の専門とする小児がんの患者さんは、沖縄県内で年間230人程度なのですが、カンボジアでは五年間ですでにあらゆる小児がん300人ほどみています。まだ日本のように8割までとはいかないですが、2割からのスタートがジャパンハートの病院にたどり着けば5、6割まで生存率が上がっています。まだ亡くなる方も多いので今まで約半数、100名以上を看取ってきました。色々な患者さんがおられますが、例えばスレイピッチちゃんは8歳の肝臓にがんがあった方で、はじめかなり大きい腫瘍で取りきれないということから、きつい抗がん剤の治療をがんばってくれたおかげで、その後手術を行い今は中学生として生活しています。将来の夢は、医者か看護師と言っていただいています。こう言った患者が増えている一方、2歳のシンホアちゃんは腎臓に腫瘍があり、日本から医師を派遣し手術は行ったのですが、他の場所に転移していて手術後亡くなりました。しかし、手術後半年程度は家族との良い時間を作ることができ、いろいろな場所におでかけすることができました。両親にもとても感謝していただきました。
写っているのはお亡くなりになられた方達で、手に入る薬が限られていたり、すでに進行していて助けることが難しいことがまだまだ多いです。それでもできる限りの治療を提供し、痛みのないように、家族が後悔しないようにサポートすることしかできないですが、それでも最後まで診ていただいてありがとうと感謝していただいています。
とてもきつい部分はありますが、本当に命を救えなくても、少なくとも家族の心を救えたかなと考えています。

カンボジアスタッフの成長

コロナ禍の中、さまざまな規制もあり今まできていただいていた日本の専門家を含めた2300名ほどの方々が渡航困難となりました。ただ、患者数は増加していくので、カンボジア人のスタッフはとても頑張っていただいて、自分たちの患者さんを自分たちで治すのだと強い気持ちで成長し、また遠隔で毎週専門家にアドバイスいただいて、今ではカンボジア人の方々が手術を執刀し、臨床面の大きく貢献していただいて、とても成長しています。

ジャパンハートカンボジア・インターン

インターンの学生が在籍し、彼らが企画を考え、長期(半年や1年)の入院をする際ずっと病院にいる必要があるのですが、美ら海水族館に協力していただいて、リモートで中継していただきながらみたことのないような魚たちをみて喜んでいただいています。このようなイベントを定期的に行うことで、入院中の活力や治療に前向きな方面へ行くように自主的に活動していただいています。美ら海水族館の方々にも非常に感謝しております。

このような活動を行いながらメディアの方々に取り上げていただいたり、カンボジアの活動が国連に認めていただいたりしていただいています。

カンボジアでの生活

6時に起床、病院の清掃をし、8時から診療を開始して17時半まで勤務。門限は21時なのでそれをまもりつつ、ボランティアの方々が来られた際は、飲み会を一回一緒に行って、オンオフのメリハリをしっかりしながら、土日などの休日はプノンペンに出かけ、マッサージに行ってみたり、沖縄県人会というものがあり、皆で三線会を毎月行っています。

海外生活の中でも様々なイベントができ楽しんでいます。

最後に
これからの展望と伝えたいこと、
〜行動することで人生が変わる〜

今後の展望
小児がんというと、どの国でも入手の難しくない薬や治療で治すことが可能なので、WHOも2030年までに6割以上生存率とすることを目指しているので、同じようにカンボジアでも病院のネットワークを作り、生存率をあげる体制を作っています。2030年に向けて、カンボジア以外の国でも子どもたちを助ける活動を広げたいということから、今の病院が狭くなってきたので、「ジャパンハートアジア小児医療センター」を2年後に開院し、病院を拡大し、より多くの患者さんを受け入れる体制を作ります。具体的にはプノンペンの近くに200床規模の病院を作り、小児一般、外科、ICU、新生児のICU含め計画しています。他の活動地であるミャンマーやラオスには、様々な理由で治療を受けることができない方がたくさんいらっしゃいます。場合によってはそういった方々も受け入れられる体制を作っていければと考えています。

自身のミッションステイトメント
私自身のミッションと目標は、1)人生を楽しむ、2)子どもの貧困をなくす、3)多様性のある面白い世の中を作る、4)沖縄・日本とアジア・世界をつなぐ架け橋になる、5)未来を担う人材を育てるということを目標としています。
沖縄というと地理的に面白く、北海道までの位置とカンボジアまでの距離が同じ程度でとてもアジアに近い場所になっています。沖縄とアジア・日本をつなぐ架け橋として、オンラインだけではなく、オフラインで伝えていければと考えています。
海外で活動する上で大切にしていることは、主体性を持つことです。自分のやることに責任を持ち、人のせいにしない、自分の人生は自分で決める。人が決めたものに従うと人を責めてしまったりしますが、自分で決めたことに対しては後悔しないと思っています。
「よくボランティアって大変だね」と言われますが、私は誰かのためにやっているのではなく例えば患者さんや家族をサポートして、得ることができる幸せがとても大きいので、自分のために究極やっていると考えています。

人生を変えるための習慣とは?
人生を変えるためには、「人生は行動することでしか変えられない」と思います。行動するといってもどういった行動するか…セルフコントロールが大切と思います。少し大変ですが、正しい行動をとるということを日頃から心がけています。

「階段とエスカレータ、どっちを選ぶ?」


これはどういうことかというと、モノレールの駅ですが、ついエスカレータを選びがちになりますが、エスカレータを選ぶ考えは楽をする考えであり、ちょっときついけど、階段を選び、身体にいい方を選んでみようという気持ちが良い方向に変わっていくと思います。

変わりたいと思ったらまず行動する。
行動することが習慣になると、自らの人格がそういう風な行動を自然と選べるようになります。
自分が変わると間接的に周りも変化したりします。
周りが変わると運命が変わります。

変化の激しい時代ですが、この大きな変化はジャンプのチャンスなので、変化を捉えつつ、
行動を起こしていくと、本当に周りも変わり、人生も変わります。

最後のスライドですが、私の好きな言葉ですが、「なんくるないさ」があります。
この本当の意味は、くじけずに正しい道を歩むべく努力すればいつかきっと良い日がくるはずです。ちょっときついことだけど、いい行動をしてみることを心がけてみたら、道は開けると思います。

ご清聴ありがとうございました。

当日の様子は沖縄平和賞公式YouTubeでもご視聴いただけます。
視聴はこちら
※嘉数医師の講演は37:15~

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