2008年5月2日にミャンマー南部デルタ地帯を襲ったサイクロン・ナルギス。嵐と高波や浸水による死者は10万人に上ったといわれている。ジャパンハートは、被災直後から日本人医師、看護師、ミャンマー人ボランティアによる支援を行いました。
また、親を亡くした孤児には生活面、教育面への支援も行いました。この支援は「サイクロン孤児支援」として孤児(または子ども)が成人するまで継続します。そしてサイクロンによって受けた心的外傷(トラウマ)に対しても専門家を招聘し、精神面へのケアを行っています。
あれから10年・・・
今回、ワッチェ慈善病院での手術ミッション後に、ヤンゴンから車で2時間ほどになるクンヤンゴン地区のサンピャー村とトングワ村を訪れました。
これらの村は、海岸から数kmの河口にあるのどかな田園風景の村です。10年前に大災害が起きた爪痕はほとんど感じられません。
サイクロン孤児支援プログラムの子どもたちを訪問し、健康診断と生活や学業についての聞き取りを行うためです。
サイクロンによる孤児たちもだいぶ大きくなりました。
大きな子はもう20歳を超えて支援プログラムを卒業して、村やヤンゴンでそれぞれの生活を営んでいます。
小さな子たちも、もう10歳を超えて元気に学校に通っています。
子どもたちは元気そう。『勉強が好き』『ヤンゴンに兄弟と住んで、仕事をしている』『早く働いて家族の生活費を稼ぎたい』『学校が休みだから村の漁師の手伝いをしている』と皆、前向きに一生懸命に生きている様子が伝わって来ました。そこにはサイクロンの爪痕はもはや過去のものなのかもと思わせるような明るさと希望がありました。
しかし、健康診断の後にお茶をいただきながら、村長やお坊さんたちの話を聞くと400家族ほどのこの村で100人以上の方が亡くなったそうです。親や家族を失い、それでも10年間懸命に生きてきた子どもたちの笑顔の裏にある強さとはどんなものなのか。
帰り際に村長たちから「10年前にサイクロンの後に村に助けに来たジャパンハートの日本人医師とまた会いたい。手当てをしてもらった住民が会いたがっている。ぜひ復興した村を見に来て欲しい。」と何度も言われました。
そこには10年経って村が復興してもなお残る感謝と信頼が垣間見えました。
私たちジャパンハートのボランティア活動が、先人たちの努力の上で連綿と受け継がれて成り立っていることを実感しました。
ワッチェ慈善病院コーディネイター 森 徳郎