「手術をしても助かる可能性は50%。でも、もしこのまま手術しなければ…」
年齢のわりに随分と小柄な我が子をしっかりと腕に抱きながら、医師からの説明に熱心に耳を傾ける母親。
あまりにも厳しい内容に、その場で状況を見守っていることすら辛いと感じている私とは対照的に、子どもをしっかりと抱いた母親は、ひとすじの希望を見出したような穏やかな表情をしていました。
やっとここまで辿り着いた…もしかしたらその安堵の方が大きかったのかも知れません。
私には想像のつかないような大きな不安や苦労を乗り越えてきた母親としての、本当の強さと愛を感じました。
ミャンマーでたった一つ、生まれつき心臓病を持った子どもの治療ができる国立ヤンキン子ども病院。
9月中旬、日本の医療チームによる手術やカテーテル治療が新たに完成した立派な心臓病センターで行われました。
ミャンマーでは長らく、100人に1人の割合で生まれると言われる心臓病の子どもと家族は、ただただ子どもの生命力を信じて祈るように生きていくしかありませんでした。
そのような状況下で4年前、ここから子どもの心臓病に対する本格的な治療がスタートしました。
ジャパンハートもミャンマー専門医療ミッションの1つとして、この事業に初期から関わってきました。
ヤンキン子ども病院と明美ちゃん基金(https://www.sankei.jp/csr/akemi)との協力のもと、日本から小児心臓外科および循環器内科の専門医をミャンマーに派遣し、子どもの心臓病の治療および現地医療者への技術指導を行なっています。
この事業が始まる1年ほど前の2013年、この事業を引っ張ってきたミャンマーの心臓外科医および循環器内科医より
「何もしなければ、この子たちが生きられる可能性はほぼ0%」
「医師として何も出来ずにこの状況を見ていくのは辛い。何とか力を貸して欲しい」
とのお願いと共に、大きな希望に満ちた口調で壮大な構想の説明を受けました。
その頃は、まだまだ心臓の手術や治療が出来るような手術室やICUも何もなく、一般的な手術設備と病棟のみといった状態だったにも関わらず…。
外から見ると無謀と言われるかもしれませんが、0%からの脱却のため、彼らの並々ならぬ決意を感じました。
0%から50%までの道のりは、医療者にとっても心臓病をもつ子どもや家族にとって、決して楽な道のりではなかったはず。
でも、それぞれの強い強い想いによって、ようやくここまで辿り着くことが出来たのだと思います。
まだまだ乗り越えるべき課題も多くありますが、
より100%に近づけるよう、引き続き共に活動して行きたいと思います。
ミャンマー専門医療ミッション
河野朋子