こんにちは。国際医療NGOジャパンハート、ミャンマー口唇口蓋裂総合治療プロジェクト専門家の口腔外科医、岸直子と申します。
口唇口蓋裂という疾患をご存知ですか?
口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という疾患は、上唇や歯ぐき、上あごが割れた状態で出生する先天性の顔面奇形です。日本などの先進国では通常生後数ヶ月で手術を含めた治療を開始するため、社会に出るころにはほとんど障害を残すことなく生活を送ることができます。
しかしミャンマーをはじめとした発展途上国では医療体制の不足や経済的・地理的要因など様々な理由により治療を受けることができずそのまま成長してしまう患者さんもいます。そのため審美障害や、ミルクが飲めない、食事がうまくできない、言葉がうまく話せないなど様々な問題を抱えたまま生きていくことになります。命に直接関わる疾患ではありませんが、その人の人生に大きな影響を与え、社会に出ることが難しくなる人もいるほどです。
口唇口蓋裂のイラストと実際の写真。
片側の上くちびる、歯ぐき、上あごが割れている状態です。
口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクトを開始
ジャパンハートは団体設立当初よりミャンマーで口唇口蓋裂患者さんの手術を行なってきましたが、私たちだけで対応できる患者さんの数には限界があります。
そして本来口唇口蓋裂は手術だけではなく看護師によるケアや言語聴覚士による言葉の訓練、矯正歯科による継続治療が成人に至るまで必要です。そこで総合的な一貫治療ができる専門施設の設立や現地医療従事者の育成を目標に2019年9月より口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクトを立ち上げました。
現在、ミャンマーの情勢は不安定ではありますが、だからといって歩みを止めることはできません。そこにたくさんの患者さんが存在することは事実であり、さらに治療を受ける機会が以前よりも難しい状況にあることは言うまでもありません。こんな時だからこそ何とかしたいという想いは増すばかりです。2023年2月からは日本人口腔外科医が常駐となり、プロジェクト推進に心力を尽くしています。
笑顔から生まれる活動の原動力
このような状況でも、手術後、患者さんや家族が治療後にほっとした様子や笑顔を見せてくれると、何ものにも代え難い暖かい気持ちで心がいっぱいになります。そしてそれが私たちの原動力にもなります。道のりが険しく困難が立ちはだかっていたとしても、一歩でも半歩でも前に進み続けたいと思います。
手術後、家族が喜んでくれるのが何よりも嬉しい