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激動のミャンマーで続ける医療活動 ~日本人スタッフが見た現地の今~【前編】

up 2023.06.15

激動のミャンマーで続ける医療活動

ジャパンハートの活動の「原点」であるミャンマー。
団体の創立当初から北西部のザガイン管区を拠点に医療活動を続け、新型コロナウイルスの影響で日本人スタッフが撤退した時期も現地スタッフだけで活動を継続しました。

けれど今、ミャンマーの医療現場は大きな混乱の中にあります。
2021年のクーデター以降、国公立の医療機関で医療者による大規模なボイコットが発生し、今なお機能不全の状態が続く医療機関も少なくありません。

不安定な情勢が続くなか、現地は今どうなっているのか。
今回は広報スタッフがジャパンハートの活動現場で目にした現状と、日本から医師を招いて約3年ぶりに行われた小児外科の手術活動について2回に分けてお伝えします。(カンボジア広報・藤田陽子)

殺到する患者

私がミャンマー入りしたのは5月下旬。
勤務先であるカンボジア・カンダール州の「ジャパンハートこども医療センター」を出発した後、飛行機と車を乗り継ぎ、丸1日以上かけて北西部のザガイン管区に到着しました。

激動のミャンマーで続ける医療活動

【病院外観】

ジャパンハートの活動拠点は、ザガイン管区のワッチェという小さな村にある「ワッチェ慈善病院」。
地元の僧侶が創設した病院で、その一部を借りる形で2004年から医療活動を行っています。
乳幼児から成人まで幅広い疾患に対応していて、子どもに対しては入院や手術費も含め無料で治療を行っているのが特徴です。

今回、初めてミャンマーの活動現場を訪れた私は、何よりもまず患者さんの多さに驚きました。

【病棟入口】

到着したのは朝8時すぎでしたが、8時半の外来の開始を待つ人たちが病棟の外まで溢れていました。

大きな荷物や小さな子どもを抱える人の姿も目立ちます。
病院周辺の地域も治安が悪化し、公共交通機関もストップしていることから、移動中のリスクを考慮して、通院せずにそのまま病院で寝泊まりする人も少なくないそうです。

激動のミャンマーで続ける医療活動

【入院病棟】

長引く混乱

患者が殺到する背景にあるのが、2021年から続く医療者のボイコットです。
クーデターの直後に国公立の医療機関に勤める医療者たちが大規模なボイコットを起こし、2年以上が経った今もその影響が続いているのです。

もともとミャンマー国内の病院や診療所の多くが国公立であることから、高い医療費を払って民間の医療機関にかかれる一部の人を除き、必要な医療が届かない状態が長期化しています。

影響は幼い子どもたちにも及んでいます。

激動のミャンマーで続ける医療活動

【アウン・カン・モー】

アウン・カン・モーは2歳の男の子。
クーデター直後の2021年3月に生まれました。

胎児の頃にお腹の壁が正常につくられず、へその緒(臍帯)の中に腸などの臓器が入り込んだままの状態で生まれる「臍帯(さいたい)ヘルニア」を患っています。

本来であれば、生まれてすぐにへその緒の中の臓器を元の位置に戻すための手術を受ける必要がありましたが、ボイコットによって地域の医療機関に受け入れてもらえず、両親は自宅で経過観察を続けるほかありませんでした。

1年以上もそうした状況が続いた頃、お母さんが地域の人を通じてジャパンハートの病院について知り、受診してきました。

激動のミャンマーで続ける医療活動

【アウン・カン・モーと両親 2022年7月】

「ようやく診てくれる場所が見つかって、ほっとした」と話すお母さん。

症状が進行していたこともあり、手術はより設備が整った「ジャパンハートこども医療センター」(カンボジア)で行うことになり、7月の渡航に向けて準備を進めています。

「私たちが最後の砦」 現地医療者たちの思い

ワッチェ慈善病院のジャパンハートのスタッフは、ほとんどがミャンマー人です。
私が現地に滞在していた5日間、スタッフたちは早朝から深夜まで外来や手術活動にあたっていました。

激動のミャンマーで続ける医療活動

【手術の様子】

1日の手術件数は約20件。
今回はジャパンハートの最高顧問で小児外科医の吉岡秀人がミャンマー入りするのにあわせて、現地スタッフだけでは対応できない難しい手術の予定が前々から組まれていたという経緯もありますが、突発的に入る手術の予定にも皆テキパキと対応していました。

激動のミャンマーで続ける医療活動

【深夜のスタッフミーティング】

多くの医療機関が機能不全に陥り、病院までの道中も危険と隣り合わせの状況のなか、こうしてジャパンハートにたどり着いてくれた患者さんのことは絶対に見捨てない。

限られた設備のなかで今できる最大限の医療を届けようと、寝る間も惜しんで働くスタッフの姿からは、そんな思いが伝わってきました。

次の後編では、約3年ぶりに最大都市のヤンゴンで行われた小児外科の手術ミッションについてお伝えします。

激動のミャンマーで続ける医療活動 ~日本人スタッフが見た現地の今~【後編】

藤田陽子 カンボジア広報
カンボジアスタッフ 藤田

2023年4月からカンボジアを拠点に広報として活動している藤田です。
大学卒業後は記者として報道機関に勤めていましたが、支援を必要とする人々に寄り添う仕事がしたいとジャパンハートに入りました。ジャパンハートに関わる多くの人の声をどんどん伝えていきます!


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