8月末、医療マッサージ師として働く視覚障がい者を対象としたオンラインセミナーを行いました。
例年、日本から専門家をお招きし、実技指導を交えた2-3日間の集中セミナーを行う時期ですが、昨年からの国際線離発着禁止措置が解かれず、今年も開催は叶いませんでした。さらには、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、密着して行われる実技指導もできない。そんな中、なんとか学ぶ機会を作れはしないかと頭を悩ませていたところ、かつてのご縁をきっかけに、今回のセミナーが実現しました。
講師を務めてくださったのは、佐藤倫子さん。2019年の8月に開催した全国セミナーのサポートでミャンマーを訪れ、それ以降も「いつかまたミャンマーへ」という思いをずっと抱いてくださっていました。
*2019年のセミナーに参加された佐藤さん
取り上げたテーマは、栄養について。高い免疫力が感染症の予防にもなりうるという意味で、受講者にとって非常に関心の強い内容でした。ぜひとも話を聞きたいと、モン州やシャン州、ラカイン州など、ミャンマー各地から参加申し込みがありました。
しかし、視覚障がい者にとって、オンライン授業はハードルの高い取り組みです。これまでオンラインツールを使ったことがないという参加者もいたため、最初の入室でつまづいたり、通信離脱からの復帰が難しかったり、音声発信の切り替えに手間取ったりといったことが起こるのは明らかでした。ストレスを減らし、スムーズな回にすべく、セミナー開催前日に接続テストを実施し、当日を迎えました。
当日は時間通りに無事全員が揃い、いざスタート。冒頭のアイスブレークでは、参加者から日本語の挨拶が飛び出したこともあり、一気に場が和みました。
本人たちの食習慣から、三大栄養素や五大栄養素、生活習慣病へと話が進んでいきます。誰もがみな真剣に聞き入り、質問も尽きません。当初1時間を予定していましたが、終わってみれば2時間半もの時間が経っていました。
受講生らの声
普段知らない栄養や食習慣の話が聞けてよかった
食べ方や栄養バランスのとり方など、気にしたことがなかったので、とても勉強になった
一定以上の満足度が得られた一方、深刻な問題も顔を覗かせました。参加者の多くが、セミナー用の通信費3,000ks(約200円)を自ら払うことができず、友人や親戚から借りているということです。
当日、参加の確認が取れた受講者には、セミナー終了後に通信費を支給しています。しかし、彼ら彼女らが事前に通信費を前もって確保しようとする際、その約200円が手元にない。そのような実情が浮き彫りになったのです。
新型コロナウイルスの感染拡大に政治的混乱が重なり、ミャンマー経済は深刻な打撃を受けています。観光客の消失はもちろん、企業の撤退や解雇が相次ぎ、国富が失われ、失業者が増加の一途を辿っています。図らずも、悪化するミャンマー経済を具体的に突きつけられた形となりました。
出口の見えない混迷は、これからも続くことでしょう。学びを志向する人々のための灯りを消さないことが、希望を紡ぐ数少ない方法の1つなのかもしれません。
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視覚障がい害者の自立支援