先日、ワッチェ村から車で1時間ほどのマンダレーというところで、在宅療養をしている男の子とそのお母さんを訪問しました。
男の子は手術の際に使用した麻酔薬の影響で脳にダメージを受け、寝たきりの状態になってしまったのです。ミャンマーには在宅療養をサポートするサービスなどはないため、お母さんが24時間365日、ひとりで男の子のケアをしています。
私たちも、1カ月に一度は様子を伺いに訪問しているのですが、今回の訪問の目的は、毎日一人で介護を頑張っているお母さんに、針やマッサージを受けてもらうためです。
その針やマッサージをしてくれるのは、普段はヤンゴンの盲人施設で活動している鍼灸マッサージ師の中島さんです。
中島さんは、ワッチェでの手術ミッションの際にワッチェに来てくださり、術後の患者さんや家族の人たちに針やマッサージを行ってくれています。
普段私もミッション中は忙しく、普段中島さんの針を打つこところなどは見たことがなかったので、今回初めて見ることができるためとても楽しみにしていました。
家に着いてさっそくお母さんの主訴を聞きます。
普段から男の子を抱っこしたり、介護ベッドなどはもちろんないため、床に布団を敷いて寝ている男の子のケアを無理な姿勢でやっていたりするため、主に腰や肩の痛みを訴えていました。
中島さんはお母さんの痛みを訴える部分を実際に触れて押さえてみて、筋肉のこり具合を確認します。中島さんは主訴を聞かなくても、触れるだけでどのように痛いか、どのくらい痛いのかなども分かってしまうそうです。
筋肉の凝り固まっている部分に針を6か所ほど打ち、電気を20分ほど流します。
初めての針治療にはじめは驚いていたお母さんでしたが、施術の心地よさにだんだんとリラックスしてきていることが分かりました。
お母さんのマッサージを終え、最後に寝たきりの男の子の手や足の関節をほぐすためのストレッチをしてくれました。
寝たきりになると、手や足を動かすことがないため、だんだんと背中や足や手の関節が曲がってしまい硬くなってきてしまいます。お母さんも普段から男の子の関節運動をやってくれているようで、中島さんはお母さんに「よく頑張ってやっていますね。」と声をかけていました。
お母さんの腰や肩の痛みは、1回では良くならないそうなので、再度訪問させてもらうことになりました。
中島さんは、「僕らの活動は普段からあまり日の当たらないところにあるから。」と話されます。
でも、中島さんの針を打つ手や相手にかける言葉、終わった後の患者さんたちのすっきりした表情などから、相手の心に寄り添い、体や心にある苦痛な部分を癒してくれているのだな、その関わり方こそが本当に「寄り添う」ということなのだな、と自分たちも普段から見習わなければ、と思いました。
余談ですが、中島さんの空いた時間に私もお言葉に甘えて針とマッサージをしてもらいました。
初めて針を受けたのですが、全く針の痛みなどなく、針が刺さった部分の筋肉に電気を流すことでだんだんとこりがほぐれていくことが分かります。
マッサージが終わった後には、硬くなっていた肩や背中がすっきりし、心までほぐれたような感覚がしました。
中島さんからの「いつもみんなのためにありがとうね。」の一言で一番心癒された私なのでした。