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お金を持っている人だけの医療にならないように- ラオス

up 2024.02.27

サバイディー!ラオス事業部看護師の髙栁です。

1月に第2回目のウドムサイ手術活動が行われました。
今回はそのときのご様子をお伝えしていきます。

皆さん、ラオスにも短い冬があることはご存知ですか?
特にウドムサイ県は山間部であるため、朝晩はしっかりと着こまないと寒さで凍えてしまいます。患者さんも着込んでいらっしゃる方が多いです。

ラオス医療活動 お金を持っている人だけの医療にならないように

さて、今回の手術の患者さんは遠方の方が多く、バスに5時間以上揺られて来られる方が多くいました。
ラオスの入院は家族総出なので、移動もとても大変だったと思います。

手術を受ける前にも術前検査などで何回か通院をしてもらわなければならず、できるだけ最小限の来院回数になるようローカルスタッフやウドムサイ県病院と相談しながら調整をしました。

ラオス医療活動 お金を持っている人だけの医療にならないように

今回の手術活動では、現地の麻酔科の先生が体調不良で参加できなくなるなど、手術活動自体が中止の危機に陥りました。
急遽、以前ウドムサイ県病院で働いていた麻酔科の先生が来て下さることになり、無事に手術を終えることができました。

急遽対応してくれた麻酔科の先生に感謝しかありません。
また、手術後も大きなトラブルはなく、全員笑顔で退院していきました。 手術前は曇っていた表情が退院するときには笑顔になっている様子を見ると嬉しくなります。

ラオス医療活動 お金を持っている人だけの医療にならないように

ウドムサイプロジェクトでは、経過良好であれば術後3日目に退院をしています。
早いと感じますか?
ラオスでは国民医療保険の財政難で、医療費のすべてが自己負担となっています。麻酔の薬や手術で使う輸液もすべて患者さん自身が薬局で購入して準備をしている現状です。 また、家族が食事やトイレなどのケアを行うため、入院中は家族総出で対応をしなければなりません。そのため、家族も入院期間中は働けず、収入を断たれてしまいます。

プロジェクト中はジャパンハートが患者さんの治療費を負担していますが、終了後は自己負担になってしまいます。

プロジェクト終了後も見据え、できるだけ低コストになるよう現地の医療スタッフに指導をしています。 また、ラオスは病院まで遠く、退院後にトラブルが発生すると簡単には対応ができません。

本当に退院させて大丈夫だろうかと不安になることもありますが、医療者の不安で入院延長の判断はしないように心掛けています。 入院期間が延びるほど患者さんや家族の負担になりますし、入院期間が長いとなれば医療が必要な人が治療を受けない可能性も出てくるからです。
お金を持っている人だけの医療にならないようにと日々模索していますが、医療の質とコストのバランスをとることがとても難しいです。

どの道が正解であるかは正直わかりません。 ただ、ウドムサイ県病院とともに歩んでいけたらと思います。

まだまだ課題はたくさんありますが、3年後にウドムサイ県病院が甲状腺治療の拠点となれるように一緒に頑張っていきたいと思います。
今回手術活動に参加してくださった伊藤病院 診療技術部 部長 北川亘先生、高知医療センター 大石一行先生、誠にありがとうございました。
そして、日々ご支援いただいている皆様に感謝申し上げます。

北川亘先生からのコメント

ラオスでの甲状腺手術支援のために、高知医療センターの大石一行先生とウドムサイ県病院に行ってまいりました。手術用の糸やガーゼなどが不足し、資材の少ない中、9名の患者様の手術に携わることができました。

手術を予定していない患者様が知らないうちに入院していたり、手術直前に麻酔科の先生から麻酔不可の判断が下され手術が中止となったりと、いろいろな経験をしました。手術支援の他には、甲状腺超音波検査のやり方などもラオスの先生方にお話しする機会がありました。ラオスの先生方は非常に勉強熱心で、甲状腺診療に関する質問を多く受けました。

ウドムサイ県病院では医療の原点を見たような思いをし、今まで日本でどんなに幸せな環境の中で手術をしているのかを痛感しました。手術前には不安な顔をされていた患者様が、手術後に大きな甲状腺腫がなくなり、笑顔になっていたことがとても印象的でした。日程の都合で患者様の退院前に病院を離れなければならなかったのですが、関わった患者様は全員合併症なく、退院されたとお聞きし安心しました。

ラオスの先生とラオススタッフの方々、ジャパンハートの髙柳玲香看護師をはじめ、すべてのジャパンハートのスタッフ、そして大石一行先生の誰一人が欠けていても、この甲状腺プロジェクトはうまくいかなかったと思っています。皆様と一つの目標に向けて一緒の時間を過ごすことができたことを、大変嬉しく思います。

今回ボランティアとして参加したことは、私にとっても大変貴重な経験であり、今後の甲状腺診療に生かしていきたいと思っています。

大石一行先生からのコメント

大学生時代に東南アジアで医師として活動をしてみたいという朧気な夢がありましたが、まさかこんな形で実現するとは思ってもみませんでした。四半世紀前にラオスを訪れたことがありますが、現在のラオスも当時とあまり変わっていない印象を受けました。特にウドムサイはあの頃の風景がそのまま残っており、民族の多い地域でもあるせいかとても風情のある町でした。

担当する患者さんは皆一家総出で山奥から何時間もかけて病院に来ている様子でした。甲状腺腫瘍も大きく生活に支障が出ているようで、甲状腺外科医としてはやりがいを感じました。

技術移転ということで現地の外科医の先生を指導する立場にありましたが、不足していると思われた専門的な知識と細かい手術操作を中心に指導すると、乾いた砂が水を吸収するように早く覚えて実践することができ、患者さんの術後の経過も良く、全員合併症なく無事に退院することができました。術後に患者さんとその御家族からお礼を言われ、皆笑顔で喜んでくれたことは本当に感動しました。

限られた資源と数々の制約の中で行う外来や周術期管理はとても新鮮であり、逆に私自身が現地の方々から多くのことを教わった気がします。久しく忘れていた医師を目指した初心を思い出させてくれました。

私達は第2陣で今回参加しましたが、次回、次々回と現地の医師、看護師が更に成長し、最終的には私達の助けなしに甲状腺診療が現地で完遂できることを願ってやみません。

ジャパンハートからこのような機会を与えて下さったことに心から感謝するとともに、現地で大変な準備をして下さったスタッフの皆様に敬意を表したいと思います。また現地で皆さんと一緒にお仕事ができることを楽しみにしています。

ຂອບໃຈ(コプチャイ:ありがとう)

ラオス事業部 看護師
髙栁 玲香

ラオス医療活動 お金を持っている人だけの医療にならないように

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス | 北部・ウドムサイ県での甲状腺疾患治療事業並びに技術移転活動

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