活動レポート

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何のための準備期間であったか

up 2022.06.29

ラオス事業部、部長の五十嵐です。

各種SNS等で様子をお届けしていた通り、ラオス事業部は6月上旬に最高顧問の吉岡秀人医師をラオスに招聘し、甲状腺疾患患者の外科治療を行いました。
この度の外科治療にあたっては、吉岡医師だけでなく、カンボジアのジャパンハートこども医療センターに勤務するスタッフや長期ボランティア、また研修生の日本人医師や看護師にもラオスに出張いただき、プロジェクトに参加いただきました。
ウドムサイ県病院での外科手術は約1年ぶり、さらに吉岡医師をはじめ日本人の医療者を国外から招いて行う手術は約2年半ぶりでした。
今回の活動では、最終的に17件の手術を実施。6月22日までに皆さん無事に退院されました。
この実施に至るまでの経緯と活動内容について現地の日本人(非医療者)目線で振り返りたいと思います。

タートルアン寺院の仏塔のまえで

医療活動の準備は5カ月ほど前から始まりました。まず、コロナ禍において人を海外から招聘することが可能なのか?仕事はラオス政府のコロナに対する入国規制を調べ、そこでたてられた見通しや予定などの規制に関する情報を日々追いかけることから始まりました。
いつコロナが終わるかなど誰しもが首をかしげる時に、外国人を入国させてプロジェクトを実施するなどできるのかの見通しが全く立たないスタートでした。

出張者や活動日程を早めに決定したいところですが、すべては「もし実施できるなら」という前提で準備を進めていました。
規制が緩和されて外国人の入国が認められるかどうか、認められたとて入国に必要な各種申請と承認が入国までに間に合うかどうか、不確定要素ばかりの中ですが、「もし実施できるなら」のていで、とにかく調整は進めなければなりません。

また、コロナ禍のラオスでの入国にあたるビザの特別審査を通過するための事前申請は活動地の病院だけでなく、外務局や保健局、国の保健省や外務省など、順番に複数の省庁に対して行う必要があります。
書類を作成し提出しては審査状況をフォローし、いつ承認がもらえるかを伺います。コロナ禍においてはどこの組織も人の出勤を制限して審査を行っており、いつもよりも審査に時間がかかるうえ、いつ審査をもらえるかもわからない状況です。
さらに航空券を取ろうにもコロナにより飛行機の数は少ないだけでなく、先のフライトスケジュールが確定しておらず、キャンセルの可能性もありました…。

手術活動を行うために、早めに出張者や日程を確定させたくともそれができず、「もし実施できるなら」という前提の上でさらに「人や日程が決められない」という不確定要素のオンパレードでした。

本当に今回の活動ができるのかどうか、判断するにも判断できず、こうしたやきもきした繰り返しの日々を経て、最終的に、入国審査の一つの目途がたち、“これなら医療活動が出来そうだ”と判断できたのは、ヴィエンチャンからウドムサイに実際に出張する日のおおよそ2カ月前でした。
そのあともラオス政府による入国規制の変更内容を気にかけ、出張予定者が無事に入国することができるように規定を確認しては必要情報や書類を精査する毎日でした。

非医療者が医療活動を実施する際に行う準備は多岐にわたります。ラオス人スタッフを中心に上のような事務仕事のほか、ウドムサイ病院との交渉業務、通訳による医療用語の確認、必要物品の確認、購入などを行います。
その中で私は先ほどの入国にあたる審査関連のほかに、出張予定者のホテルや移動手段、ヴィエンチャンからウドムサイまでの交通手段や現地ホテルの手配、インターネットの手配、必要経費の用意、活動中のSNSの投稿内容の事前準備などをスタッフと一緒に行いました。

実際に関係者が無事に入国し、ウドムサイに出張したのは5月30日。そこから6月9日にヴィエンチャンに戻るまでの日々はまさに怒涛でした。

医療者の方々が医療活動に従事される中、私たち非医療者は何をすべきなのか。実際に参加してみると、医療者の資格がなくてもできる作業は多々あり、地味に工数を要し、比較的頻度が高い業務がおおいことがわかりました。
例えば、患者さんや医療者の手術着の整理整頓です。
使用するたびに病院へ洗濯を依頼しますが、洗濯後は種類やサイズごとに決まった折り方でたたみ、必要枚数ごとにまとめます。
一度やり方をおさえてしまえば簡単なものですが、枚数が多いだけにそれなりの時間がかかります。
他にも手術室用のシューズの洗浄も日々発生する業務です。

床に茣蓙を敷いて、手術着の整理をしている様子

お手洗いで、手術用シューズを洗浄する様子

怒涛の日々の中、医師や看護師の姿からはジャパンハートの活動の神髄のようなものを見た気がしました。
海外に行き、そこで医療を提供するという生き方を選択している医療者さんの強い意志と覚悟のようなものを患者さんと対峙する様子から感じる気がするからです。

それは退院時に感謝してもしきれないという患者さんの嬉しそうな笑顔を見た時、そして医療者や看護師が回復に向かう患者さんや退院される患者さんに対して嬉しそうにされるお顔をみたときと同じように、「ああ、私たちの準備の日々はこのためにあったのか」と準備期間のもどかしい日々と時間に意味をもたらし、そしてああやってよかったという達成感を与えてくれました。

手術室の様子

手術を待つ患者さんと看護師の様子

順調な準備期間ではありませんでしたが、今は無事に活動を終えることができて安心感と充実感でいっぱいです。
このような機会に参加することができたこと、身内ながら貴重な経験をさせていただいたことに感謝の想いです。
ラオス事業部は、現在看護師1名、非医療者のローカルスタッフ5名という体制です。これからもスタッフ同士で協力し、医療者を支え、患者さんを支える仕事をしていければと思います。

ご一読ありがとうございました。

ラオス事業部 部長 五十嵐

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス | 北部・ウドムサイ県での甲状腺疾患治療事業並びに技術移転活動

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