活動レポート

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「できない理由」の反対側に見えるもの

up 2021.08.25

サバイディ!ラオス事業、看護師の吉田です。

2021年6月に約1年半ぶりにウドムサイ県病院での手術活動を行うことができました。
なぜ1年半も期間が空いてしまったのか。それは途上国と言われるラオスにもコロナウィルスの影響が先進国と平等に降りかかり、結果医療を滞らせているからです。

2020年3月、手術活動を中止しました。それは手術活動2週間ほど前の決断でした。
そして4月には、日本人スタッフ全員が帰国する結果となりました。
その後約1年半、ウドムサイ県病院では内科診療のみ継続をしていました。
もちろんこの一連の状況はコロナウィルスの感染拡大の影響によるものです。

現在、ラオス入国のためVISA取得は非常に難しく、入国後強制隔離が2週間あります。
そのため今までのように日本から医療者が参加した手術活動を行うことはできません。
ウドムサイ県病院での活動は、日本から医療者に参加していただき、現地の医師が甲状腺疾患の手術が行えるようになることが1つの目標であり、まだまだ指導が必要な状況です。

今回の手術活動の一枚。写真に映る人が全員ラオス人だということを誇らしく思います。

(頭上のあるのはオンライン指導用のカメラです)

甲状腺疾患は命に直結する疾患ではありません。では命に直結しないから後回しでも良いのでしょうか。
甲状腺は頸部にある臓器です。それが拳大以上に腫大することがあります。
その「こぶ」があることでどれだけ大変な生活を強いられているのだろうか…見た目はもちろんですが、例えば仰向けで寝ると息苦しさを感じる患者さんも多くいます。
どんな境遇や結果であろうと、例えささやかであっても、医療はその人や家族に笑顔や潤いを与え、それがいつかの幸せにつながると私は信じています。
だから、このコロナ禍であってもどうにか活動を継続する方法を見いださなくては…と考えた結果、オンラインを使用した遠隔での手術指導を決断しました。

手術後に振り返り指導をしている様子。

遠隔での手術指導にはジャパンハートの認定医である、遠藤俊治先生、河内順先生にご参加いただきました。遠隔指導とは、日本にいる医師にオンラインで手術現場を見ていただきながら指導していただく、という方法です。

今回ご参加いただいたお二人は、ウドムサイ県病院で執刀もされたことがあり、現地外科医と一緒に活動もしています。
「日本で遠隔手術の経験はありますか?」
今回オンラインで手術活動を行うにあたり、何度もこの言葉を投げかけられました。
答えはもちろん「No」です。

オンラインで手術指導を行うことは、もちろんリスクを伴う行為でもあります。
行うべきではないのではないか…準備を進めれば進めるほど、そんなことばかり頭を過ぎりました。
しかし、診療活動で出会う患者さんやウドムサイ県病院スタッフの「手術活動をしたい」という強い思いに触れるたびに、この方法で安全行うにはどうしたらいいのか、と必死で考えている自分がいることに気がつきました。
今回の手術活動には、ラオスの首都にある1番大きな病院、「マホソット病院」からDr.Khamphyにも参加していただきました。
日が迫るにつれ、コロナウィルスの影響によりたくさんの制限が通達されました。
当初予定していた1/3の日程でしたが、5人の患者さんの手術を行うことができました。

▼活動の内容については、こちらのレポートをご覧ください
ラオス・ウドムサイ病院での医療活動に参加して

もちろん私1人では何もできません。一緒に活動するスタッフの力があってこそです。
彼らを信じて同じ目標に向かって進めることが、活動を成功させるのに1番重要なことだと学ばされました。
何度も諦めず、話し合いを重ねた努力が今回実ったのだと感じています。

活動をするために自分たちの役割を超えて話し合いを何度も行いました。

先日、手術を受けた患者さんが退院1ヶ月後の診察を受けに来てくれました。
この時季のラオスはカオパンサー(仏教行事:雨安居入り)真っ只中であり、雨季となっています。雨が続くと、山奥に住む患者さんは診療に来られなくなることもあります。
そんな状況下で、1人心配な患者さんがいました。

その患者さんは甲状腺疾患特有の症状が出やすく内服コントロールをし、手術に挑みました。手術前後も疑わしい症状が何度もありました。
ただ、この患者さんは山奥に住まわれていたので、今回の診察には来られないだろうなぁ、と思っていました。

診療の朝、受付を待っている人たちの中に手術を受けた患者さんたちがいました。久しぶりの再会を喜び会話していましたが、その患者さんの姿はやはりそこにありませんでした。
午前中の診療活動も終わりに差し掛かったころ、その患者さんは笑顔で現れ私に抱きついてくれました。
その時に少し濡れた髪と服に触れ、「どんな思いでここまで来てくれたのだろうか」と思い、私たちの活動をどれだけ大切に思ってくれているかを感じました。
診察に来るために家族に頼み、いとこが運転するバイクに乗り2時間雨の山道を来てくれたそうです。コロナウィルスの影響で、村々とウドムサイ市街地を結ぶバスのほとんどが休止しています。
また、他県からの入県には特別な許可書の保持やワクチン接種が終了している、などのルールが敷かれ頻繁に変更されることもあり、生活が複雑化しています。
素朴な暮らしをしているラオスの人たちにとってこの環境下で生活するのは難しいことだと思います。

患者さんが機織りをしたルー族の伝統的な布(たくさんの動物が描かれています)と

旦那さんが大切に育てたカオニャオ(餅米。ラオスでは主食)をたくさんいただきました。

この布を織れるようになるには12年かかるそうです。

それでも私たちの診察に来たいという思いを目の当たりにしたとき、手術を無事に終え診察に来た患者さんたちから笑顔とたくさんの感謝をいただけたとき、それがどんなに大きなことであったか感じずにはいられませんでした。
数字だけ見れば小さなことかもしれません。けれども待っている人がいてその人たちの笑顔に会えるのなら、とても幸せな活動をしているのだと気付かされました。
私が感じ、与えてもらっていることを信じ、少しずつ進め続けていきたいと思いました。

ラオス事業 看護師 吉田 真弓

内科診療や手術活動の様子は動画でもご紹介しております

よろしければご覧ください!

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス | 北部・ウドムサイ県での甲状腺疾患治療事業並びに技術移転活動

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