助産師として活動しております、波田野です。
前日の準備など含め5日間の「おしゃべり喫茶」企画に、能登の現状を知ること、肌で何かを感じることができればと思い、参加しました。災害から1年近く経過しての参加となりましたが、豪雨の影響もあり、被災後のまま残っている場所や抜け落ちた道路などを見て被災の物々しさを感じました。
災害関連死を防ぐ活動
参加にあたり、正直「おしゃべり喫茶」でどういったことをするのだろうか、自分に何かできることがあるのだろうかと漠然とした不安で現地入りしました。テレビでも取り上げられるのは被災直後の災害支援が主で、発災直後はかなりの大混乱だったと聞きました。自分の中で発災直後の支援が一番の災害支援だと思っているところもどこかありました。
しかし、超急性期の災害支援が重要なことは重々承知ですが、少し時間が経過した頃の災害関連死を防いでいくための長期的な支援の重要性を今回身に染みて感じました。中には支援団体に好意的な方もいれば、そうでない方がいるのももちろんのことで、明らかにフォローが必要そうだが介入してほしくない方や介護負担が一手に圧し掛かっていながらも何とか生活されている方、高齢独居の多さなど難しい問題が山積みでした。
助産師6年目の年で医療者となってからは初めてのボランティア参加となり、学生の頃とはまた違い、医療者としての観点から求められるものもあり、その期待に応えることができず申し訳ない部分もありました。どうしても病院での患者さんとしか関わりがなかったため、期限の切れた食事や内服できていないなど目の当たりにし、それがその人の生活であり、最低限の生活ができように生活者として見ていくことの難しさも改めて感じました。
来場された方々の中で「命があるだけでありがたい。生かされていることに感謝をして前をみて生きている。」と目頭を赤くして話される方がとても印象に残っています。反対に「震災のことを考えるとつらくなる。全部奪われて生きている意味がない。やっぱりあれはショックやったね。」と話される方もおられ、気丈にふるまっておられても人それぞれの思いや体験も違うので、その場では何もできなくても精神面のフォローや発散する場所の提供は継続していかねばならない部分だと思いました。
「当たり前」に感謝
今回毎回移動しながらの購入した即席の食事、入浴施設での入浴や仮設トイレ使用、体育館での段ボールベッド・寝袋での寝泊まりなど初めての経験をしました。「とにかく寒かった」の一言ですが、今回私たちは食事を暖めることも暖かいお風呂に浸かること、暖をとることもできました。ですが、被災当時は今よりもいかに過酷な状況であったことかと想像できます。当たり前の生活ができることがどれほど幸せなことか、普段の生活に戻った今とても感じています。
私自身昨日まで何もなくこれからいつでも会えると思っていた家族が突然居なくなり、二度と戻ることはないという経験をしたからこそ、突然失うことのつらさが分かる部分もあるのではないかと思いましたが、想像以上に、どんな声がけや寄り添いが最適だったのか、迷い、難しさを感じました。人生を諦めてしまいたくなるほどの悲しい出来事は一生忘れることはないし、それをふと思い出すことさえもつらいと思うこともあると思います。一人で過ごしたい人もいれば、話したくはないけどでも誰かに傍にいてほしい人もいると思うので、私は話すのはとても苦手ですが、表情などを見てそういう時に寄り添えることを大事にし続けていきたいと思いました。
今回初めての参加でしたので、カフェの運営や訪問の仕方などを一から学びながら実際に行ってみて、初めましての方も気さくにお話をしてくださいましたし、このカフェ企画を楽しみにされている方が沢山おられ、これまで月日をかけて活動されてこられたジャパンハートの皆様のご尽力や地域の方たちの暖かい人となりにより繋がり、築かれたものなのだと感じました。12月は本企画がはじまって過去最多の戸別訪問もできたということですし、最初は声を掛けることに緊張しましたが徐々に慣れてくると、多くの方と少しでも関わり、お話をできたことがよかったです。
現在ジャパンハートのRIKAjob(https://rikajob.net/)で対馬病院に勤務しておりますが、新生児から高齢者まで様々な患者さんと関わる病院とはまた違って、貴重な経験・これからの糧になる数日間だったと思っています。今後もこのような活動が続くことを願い、また改めて機会があればぜひ参加させていただくことができればと思っています。
助産師 波田野
ジャパンハートが行った能登半島における支援
ジャパンハートでは能登半島地震の緊急救援活動として、2024年1月4日から4月20日までの間に避難所と診療所への看護師常駐、輪島市門前地域の避難所巡回診療を行ってまいりました。
現在、仮設住宅の開設が進み、避難者数は減少傾向にありますが、ジャパンハートは引き続きニーズに応じた支援を行っています。
その活動の一環として、地域の保健士さんと連携し、仮設住宅に入居されている方々のコミュニティづくりの促進や潜在的な健康問題(医療、介護、福祉面)の拾い上げを目的とした短期イベントを定期的に実施しています。
令和6年能登半島地震 緊急支援活動のご寄付について
皆様のあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。
寄付をする
ジャパンハートの災害支援・対策(iER)
ジャパンハートの災害支援・対策iER(International Emergency Relief)では、国内外で発生した大規模災害に対応し、緊急医療支援を実施しています。
■2011年3月~2014年3月 東日本大震災緊急支援
■2016年4月 熊本地震緊急救援
■2020年4月~2022年9月 新型コロナウイルス感染症緊急救援
■2021年8月 令和3年8月豪雨災害緊急支援
■2022年9月 台風14、15号緊急支援台風
■2023年7月 令和5年九州北部豪雨緊急支援
今後も現場の支援ニーズを見極めながら、救援活動を継続的に実施していく予定です。
災害支援・対策(iER)
活動を支援する