私たちジャパンハートは12月6日から約1か月間計3名で、旭川市にある重症心身障害児者施設の北海道療育園(以下、療育園)で支援を行いました。
これまでの病院や高齢者福祉施設と違い、重症心身障害児者施設への支援はジャパンハートとしても初めてでありました。不幸中の幸いで、感染が広がった棟は、肢体不自由や知的障害をもつが、人工呼吸器や気管切開などの高度な呼吸ケアを必要としない方が入所されている棟でした。しかしながら、この高度な呼吸ケアを必要としない棟であっても、自力で寝返りができないなどの介護度の高い方、基礎疾患がある方、脊椎の変形などで肺が広がりにくい方や、嚥下機能が悪い利用者も多くおられました。感染が拡大していく中でどうにか誰もが重症化しないで助かってほしいと願いながら働いておりました。
療育園では大変な状況にあっても利用者一人ひとりの気持ちもとても大事にされていました。利用者からすると、ある日突然居室から出ないように言われ、みんなで楽しく食べていたご飯の時間もなくなり、クリスマスなどのイベントごともなくなり、家族との面会もできず、なにがなんだかわからなかったと思います。
また利用者と密着して行うケアが多いため、スタッフは全身スーツの白い防護服を着用していました。棟内は全身白い装いをしたスタッフだらけになり、少し異様な光景でありました。いつも笑顔で接してくれるスタッフの表情もわからなくなり、ケアの受け手である利用者さんは混乱しただろうなと思います。
ある朝、不安な表情を見せ泣いている利用者の男の子をハグしているスタッフの姿がありました。もちろん、スタッフは白い防護服を着ていて、その手には二重、三重と重ねた医療用グローブ越しにしか患者を触れることができません。なんだかこんなつらいときに人の体温も感じれないのかと、改めてコロナの恐ろしさと利用者に牙をむく現状を感じました。
私は療育園のクラスター終息前に次なるクラスター現場の兵庫県に移動しましたが、のちに療育園が一人の死者を出すことなく無事に終息したと報告を受けました。もちろん高齢者福祉施設と違い少し平均年齢が若いなど、いろんな要因があって最悪の事態を免れたと思います。しかし、私が考える一番の要因はクラスターが発生する前からの療育園の皆さんの質の高いケアの提供が日々行き届いていたことと思います。基礎疾患のコントロール、呼吸ケア、栄養管理、皮膚のケア、運動療法など、それらがコロナに負けない体づくりとなり、利用者を守ることができたのではないかと思います。
旭川市では療育園と、同市内の吉田病院(吉田病院へはジャパンハートも看護師派遣)へ自衛隊の看護官も派遣されるほどの事態となりました。私自身も自衛隊の方と一緒に勤務をさせていただきました。自衛隊の皆さんが任期を終え療育園を去る日、色々と無知な私が自衛隊っていつもなにしてるんですかと質問すると「訓練です」と答えていただきました。
療育園がクラスター発生前から質の高いケアが行き届いていたことが最悪の事態を免れた要因と思ったこと、いつどんな要請がきても対応できるようにと日々訓練を続けている自衛隊。毎日はいつかのための最大の備え期間であるんだなと学ばせていただきました。
療育園に平和な日々が戻り本当によかったと思います。大変な毎日の中でも楽しくお仕事をさせていただいた療育園の皆様に心より感謝いたします。
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国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ