余目からこんにちは。
私は現在、山形県にある庄内余目病院で勤務しています。当初は半年間のみ勤務の予定でしたが庄内の魅力にハマり、約1年こちらでお世話になっています。
余目病院は災害スキームといって平時は地域医療に従事しながら、緊急時にはジャパンハートからの要請をもとに、iER(国際緊急救援)活動に出動できる仕組みをもった数少ない病院のひとつです。
今回もジャパンハートからの要請があり2022年4月中旬からコロナのクラスター支援のため沖縄で1か月間活動しました。
クラスター支援の活動場所は主に高齢者施設で、活動内容は入所者の日常生活のケアや健康観察だけでなく、感染防具の着脱やゾーニングが適切か、物資は不足していないか、入所者の状態が悪化した時に相談できる窓口はどこなのか等の情報を集める必要があります。
これは一見、看護とは関係がないことのように思えますが、正しい情報を集めて共有することが迅速な支援に繋がるのです。
ですが、情報収集にはある一定の経験が必要とされ、混乱した現場では正しい情報を得るまでに時間がかかることもあります。
なかなか自分の思うように情報収集ができず悩んでいる時、ある先輩看護師が声を掛けてくれました。
「外部支援が入ってオリジナルスタッフは助かる反面、結構ストレスもかかる。外部支援は司令本部であーだこーだやりがちだから、現場のスタッフと入所者が取り残されないように注意してね。目の前にいる現場スタッフと入所者に注力してください」と。
目の前のスタッフ・入所者に注力する。
これは災害・クラスター支援の基本でとても大事なことだけれど、クラスター現場のような混乱した状況ではつい頭の片隅に追いやられてしまうことがあります。
支援する側は状況を型にはめ、クラスター経験者・医療従事者の観点から正しい方向に現場を誘導しようとします。
もちろん支援する側は現場のためにと思いやっていることですが、現場スタッフからすると、現場のことをよく知っているのは自分達なのに半強制的に誘導されたと感じ、コミュニケーションエラーを起こすことがあります。
こういったコミュニケーションエラーを起こさないようにするには、支援する側と支援される側の境界線をできる限り無くすことではないかと思います。
例えば、〇〇病院の人が来てこうやって感染対策するように指導されたけど、そんな病院レベルのことはコストや人手の問題があるからできない。という施設職員の声をよく聞きます。
そういう時は、どんな方法なら運用できるか現場の意見を聞きながら一緒に考えていく作業が重要になります。
これは、状況を型にはめて一方的に正しいやり方に誘導するやり方とは異なり、問題の解決方法を考えるのはあくまで現場スタッフ自身で、支援する側は必要な時に相談に乗ってアドバイスする役割です。
こうして現場スタッフ自身で解決策を考えることで、また次に新しい問題が起こった時の解決策を自分達の力で編み出していくことができます。
そうやって支援に寄りかからず自律に向かっていく現場の力を間近で感じられるのは支援する側のやりがいでもあります。
クラスター支援のやりがいは他にもあります。沖縄は4月とはいえ日中はクーラーが必要な暑さになります。
そんな中でスタッフは換気が良くてクーラーの効かない室内で長袖ガウン・手袋をつけ、陽性者のケアをします。ちょっとした空き時間、スタッフと扇風機の前で「暑くてもう限界~」と笑いながら話す何気ない場面が記憶に残ります。
大変な時期を一緒に乗り越える、助けたい人が目の前にいる状況で働ける機会をもらえるのは本当にありがたいことだなと思います。
支援という型や先入観にとらわれず、現場スタッフ・入所者に目を向けて常にコミュニケーションをとりながら解決策を一緒に編み出していく、そんな支援を目指していきたいです。
ジャパンハート看護師 堀口
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国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ