活動レポート

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心に寄り添う~豪雨災害後の支援に参加して~

up 2021.11.01

広大で綺麗な田園風景。この風景が一転して、あっという間に茶色の湖のようになってしまったそうです。

令和3年8月豪雨災害の中でも甚大な被害に遭った佐賀県。
私は8月14日テレビの画面越しに豪雨後の氾濫と浸水被害で孤立してしまった病院のニュースが印象的だったのを覚えています。

ジャパンハートはその後活動要請を受け、約3週間経過した9月5日より現地入りしました。
甚大な被害を受けた佐賀県大町町と武雄市へ向かう道すがら、主要道路は問題なく開通しておりスーパーやコンビニが営業している様子もありました。
注意深く見ているとあちらこちら、自営業のお店や住宅の側には家財道具や床板らしきものが積まれており、一歩住宅街に入るとその様なお宅が何件も続いていました。
一見外観は普通に見えるお宅も、泥で濡れてしまった家財を住民の方が運び出していたり、ボランティア団体の方々が作業している姿を目にし、その光景から被害の大きさを感じ取りました。

この地域を流れる六角川は、これまでも幾度か氾濫を起こしており、周辺に暮らす住民の方々は浸水の影響を受けながら生活してきました。
しかし、ここ数年浸水被害は悪化しており、これまで以上に床上浸水が多く、これまで被害の無かった一帯へも被害が拡大していました。
そして何より、令和元年の豪雨災害(浸水被害)からわずか2年の月日で再度被害に遭われた住民の方々が大勢いることが今回の災害の特徴でした。

私の活動は、主に大町町に暮らす被災者の方々の健康観察を自宅訪問という形で調査を行いました。
床上浸水の被害に遭われた方も含め、住宅の2階で生活を続ける「在宅避難」をされている方々が大半であり、現地入りした時点で避難所を利用している世帯は10数世帯でした。

避難所では目が届く分、体調変化やニーズに気が付ける面もありますが、在宅避難ではそれに気が付きにくく介入が遅くなってしまうこと、また住民の方が支援を受けることを遠慮してしまいニーズの声が届かないこと、そして時期的にも心身共に疲弊し、助けや困っていることを発信する気力もない状態に陥り、私達が見過ごしてしまう等のデメリットがある様に感じました。

このような「声の届かない被災者を一人でも拾いあげる」という目的もあり、一軒一軒訪問し健康被害の有無、自宅の被害状況や復旧の程度、生活面における困り事などを聞き取りました。
そして、支援が必要な場合は、それぞれの専門分野のボランティア団体へ情報提供し、継続した支援が出来るように橋渡しの役目も含めた活動をおこないました。

健康面の問題としては、(車が壊れ手段がない、時間が作れない等の理由から)通院出来ず内服を中断していた方、転倒し怪我をされた後も受診出来ずにいた方、(災害当時のフラッシュバックや今後の不安から)不眠に陥っている方、栄養面の偏りから持病の悪化が懸念される方などがいました。

訪問調査では聞き取りの情報に加え、暮らしぶりを垣間見ることが出来ました。
自宅の被害状況や生活状態を聴取する理由も、きちんとした寝床があるのか、衛生面は保てているのか、被災した場所で暮らすことで怪我などのリスクはないのか等を見聞きし、トータルして個々に必要な支援を導き出すことの重要性を感じました。

訪問では住民の方々の想いを傾聴する目的もありました。前述した様に、前回の被災からわずかな期間しか経過していないため、住民の方々の精神的苦痛、経済的ダメージは図り知れません。

自宅の被害だけではなく『農作業の機械はやられちまった。簡単には動かせないから。また借金だよ』とやりきれない思いを抱える方。
この先どうしたら良いのかと途方に暮れ、落胆する方。
『同じように2度も被災してしまい情けない』とおっしゃる方。
さらには『ここに留まりたいけれど、もうここで生活は出来ないかもしれない。でも簡単に引っ越しも出来きるわけじゃない』と今後の生活に迷い・悩む方。
『まだまだこの先、霧がかってるわ』と表現される方もいました。

私はこれまで被災者経験をしたことがありません。被災者の方々の感情のこもったお話しを聞くたび、どのような声掛けをしたら良かったのだろう・・・と悩む時もありました。

そんな時、ある方から『近所の人も心配で来てくれるんだけど、話してると逆に気が滅入っちゃうの。
でもあなた達とだと違う話しも出来て気が紛れるわ』と言うお言葉を聞きました。
またある時は、『また回っているんですか。気に掛けてもらってありがとうございますね』『(デイサービスが休業してしまい)友達と会えなくなってしまったから一人の時間が多くてね。話し相手になってもらってありがとう』とのお言葉もありました。
声掛けの言葉を探すよりも、被災者の方々の心情に寄り添うことの大切さを感じた瞬間でした。

さらに、今回はコロナ禍の影響が支援の場にも現れていました。
一般のボランティア人数が少ないこと、被災者の方もコロナを気にされボランティア団体の介入を躊躇してしまい、結果的に自分達で作業を行う状況に陥っていたこと、県外に住む家族(特に老夫婦の場合子ども達)が容易に来ることが出来ないこと、炊き出しが容易に提供できなかったこと等です。

withコロナへと移行するなか、課題を理解し、互いに安心出来る対策の上で、被災者の方々が必要な支援を受けられることを考える機会になりました。

最後に、現場では地元の支援団体の方と多くのボランティア団体が協働していました。
その中に加わり多職種連携の重要性と、被災者の方々の生の声を肌で感じ取ることが出来たこと。
そして、時期による被災者のニーズの変化を捉えること。
被災者の方々の心情に寄り添うことの大切さ。
多くの経験と感じた気付きを今後に活かすことができればと思います。

今回の活動において、快く受け入れていただいた住民の方々をはじめ、携わらせていただいた方々に感謝いたします。

ジャパンハート看護師 坂本真南

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