2021年5月中旬、沖縄県の要請により有料老人ホームのクラスター支援を開始しました。
私が支援を開始した頃には、施設スタッフの多くの方がコロナウイルス陽性となり、スタッフの半数ほどが外部支援者という中で現場の看護、介護を提供しなくてはならない状況でした。
そして、施設内で点滴投与や酸素投与といった医療行為を行う必要がありました。
そのため、現場では施設のスタッフと地域の医師、ICN、外部支援の看護師、介護士、ロジスティック等がチームとなり、協力しながらクラスターの対策を行いました。
多くの外部支援者が介入していましたが、その中で私は改めて施設スタッフの皆さんを中心とした支援の重要性を感じました。
入居者さんのことは施設の方々が一番理解しています。
私たち外部支援者が困っているときに入居者さんのことを考えて、関わり方をアドバイスしてくれたのはいつも施設スタッフの皆さんでした。
施設スタッフの方々が復帰するにつれて入居者さんの笑顔が増えていく様子をみて、長い時間一緒に過ごしてきたスタッフの顔を見られることは入居者の方々にとても安心感を与えるということを実感しました。
スタッフの皆さんが入居者さんの好きな食べ物をもって訪室したり、落ち込んでいる方がいたらおしゃべりや清潔ケアをして励ましたり、入居者さんの性格を考えながら愛情をもち、誠実に接していた姿にとても感銘を受けました。
クラスターという状況下でも施設のスタッフが心に余裕を持ち、笑顔で過ごせるために支援することが、結果として良い看護、いい介護に繋がるということを感じました。
私が今回の支援で強く印象に残っている言葉は「入居者さんには人生の最高の卒業式をしてあげたい」という言葉です。
施設のスタッフの皆さんは日ごろから入居者さんが望む人生の最期を迎えるために何ができるかを話しあっていたそうです。
クラスターにより想像していたようなお看取りができなかったかもしれません。
しかし、感染症対策によって制限された環境の中でも、窓越しにご家族と面会ができる機会を作ったり、お看取りの際は素敵な衣装を着せて、たくさん話しかけながらお見送りをしており、スタッフの方々の熱意を感じました。
その様子をみて、私もどんな状況下でも気持ちを込めた医療を提供することを大切にしたいと思いました。
当施設は、クラスターが落ち着いてきたころには他施設からの濃厚接触者の受け入れも積極的に行っていて、大変だったはずのクラスターの経験が次の支援につながっていると聞いて、とても暖かい気持ちになりました。
メンバーの一員として私たちを優しく受け入れ、ときには沖縄の方言を通訳してくださった施設スタッフの皆様、一緒に悩みながら活動してくださった外部支援の皆様に心より感謝いたします。
看護師 冨永 裕美
▼プロジェクトの詳細はこちらから
国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ