2020年5月より始まったクラスター対策医療支援
ジャパンハートクラスター対策医療支援チームは、北は北海道から南は沖縄まで20か所以上の病院・施設で活動を行ない、1月15日現在も5か所の施設・病院で活動を継続しています。
それぞれの現場で多くの方との出会い、そして別れがありました。
今回、印象に残った患者様についてお話しさせていただきます。
70代女性、癌の末期で既にモルヒネなどの緩和治療が開始されていました。
癌の患者様によくみられる「るい痩(瘦せ)」はなく、きっと最近までお食事ができていたのだと思われます。
意識もあり意思疎通が多少できる状態でした。
しかし、新型コロナウイルスに感染したことにより、呼吸状態がかなり悪く、酸素を限界まで多量に流し、ステロイドなど治療のお薬も点滴で投与されている状況でした。
高齢、かつ癌の末期となると、身動きをしない、できないことがほとんどですが、この方は体力があり、酸素や点滴を全力で嫌がって常に外そうとしていました。また呼吸苦から不穏な状況で、こちらの言葉がなかなか耳に入らない状況でした。
私がお部屋に行くと、ハアハア言いながらも必死に声をかけてきます。
「とって、これ取って、取っって!!お願い!ハアハア」
と、点滴や酸素を外すことを懇願してきます。
必要性を説明するも、呼吸苦からかなり混乱していて理解は得られませんでした。
何度説明をしても点滴や酸素を外そうとしたため、手を握り阻止しようとすると、苦しさからバタバタと手を動かしていた行為を諦め、私の手を力強く握り返してきました。
しばし、5分くらいでしょうか、手を握っていましたが、クラスターの現場はそれはそれは忙しく、通常業務を回すだけでも大変なので、ずっとその方の傍にいることもできず、、、
「また来ます」とお伝えし、酸素と点滴は身体を楽にするためにとても大切な治療であること、だから外さないでほしいことを伝えました。
諦めたのかその後、空を掴むように手をばたつかせる行為は少なくなりました。
「また来て、お願い」
といわれ、その日から数日、同じようなことが繰り返されました。
ある日、朝病棟に行くと、その方は亡くなっていました。
コロナ陽性ということで、臨終にご家族は立ち会えません。
しかし、病棟スタッフは、きちんとエンゼルケアを行い、ご家族に防護服を着せて、対面をさせていらっしゃいました。
※エンゼルケアとは死後に行う処置、保清、エンゼルメイクなどの全ての死後ケアのことで、逝去時ケアとも呼ばれます。
最期、意識はあったのだろうか?
苦しまずに最期を迎えられたのだろうか?
家族の手を最期、握りたかったろうな、握らせてあげたかったな。
考えてもどうしようもない想いが頭をぐるぐるしました。
今でも手の感触、力強さが手に残ります。
何もしてあげられなかった悔しさ、しかし手を握ってほしいというニーズは叶えてあげられた。でも握りたかったのは私の手ではなく家族の手。
いろんな思いが、やはり頭の中をぐるぐるしますが、考えても何かが解決するわけではなく、クラスターが収束するわけでもありません。
私は医療者として、これからも自分にできることを精一杯行っていきます。
ジャパンハート看護師 宮田
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