ジャパンハートの災害支援チームを率いる災害支援・対策セクション 部長 髙橋茉莉子にこれまでの1年の振り返りとジャパンハートが大切にしていること、今後の災害に向けての考えを聞きました。
令和6年能登半島地震から1年を振り返る
私として印象深かったのは、1月1日に地震があってその後9月21日に豪雨災害があったということです。
そもそも能登半島地震はインフラ等の問題もあって、超急性期と言われる発災直後6~72時間、その後1週間が急性期、そこから亜急性期に至るまで、状況が落ち着いて復旧が進んでいくというセオリーがありますが、今回は水道管も復旧に時間がかかり、発災から半年以上経っても多くの方が避難生活を継続しておられたというのも、今回の災害の特徴の1つだと思います。そこに追い打ちをかけるように9月、豪雨災害が発生しジャパンハートも9月21日から中長期支援をしている団体として、早急に現場に入って支援をさせていただきましたが、仮設住宅に多くの方が避難所からうつっていかれて、これからの生活を考えようというタイミングで豪雨災害が起こり、再び避難所生活を余儀なくされました。ご自宅で生活できていた方が新たに仮設住宅に入らなければいけなくなったというようなこともあり、豪雨災害のインパクトは精神的にも非常に大きなものだったと思います。
今の能登における課題
超高齢地域であるというのは、今の課題にもつながっていると考えています。
もともと医療過疎地域、少子化高齢化が進んでいる地域なので、今回の災害を機にどうしても人口が急激に減少。今後10年20年復興と向き合っていくことになると、その担い手、例えば施設などでは働き手が戻らない場合、さらに高齢化していく方たちの受け皿がない状況になり得ます。
10年後20年後今よりも高齢化し、人口減が進んでいくことを前提にして、どのような復興モデルを立てていくのかというのは非常に難しい問題ではないかなと感じています。
課題に対しジャパンハートができること
当然日本国内の他の高齢地域で起こった時にも想定される課題が今の能登に詰まっています。
私たちは災害関連死を抑止しようというコンセプトで活動していますが、実際能登では災害関連死が直接死を上回って久しい状況です。活動を続けることでその答えが出るか分からないですが、災害関連死を課題感として持つ団体として、能登に対してできることは何かを、都度考えながら実施していくことが大事だと思っています。
足元は仮設住宅でのサロン活動で、孤独死やコミュニティが一度バラバラになってしまった状態から、接続できるまでの間、お手伝いすることが私たちなりの1つのやり方なのかなと思い、継続をしています。
災害支援においてジャパンハートが大切にしていること
災害支援は絆創膏みたいなものです。
できるだけ早く剥がせるなら剥がした方が傷の治りが早いこともあります。長く支援を続ける、というそのものが重要なのではなく、あくまでも私たちは一時的な外部支援として現場の方たちにどう寄り添えるかって言う観点で活動をしています。決して私たちが主役ではないって言うことがすごく大事なことかなと思っています。どうしたら被災現場の方たちをサポートできるのか、という観点で活動するマインドセットはすごく大事だと思います。
災害支援の初動で大事にしていること
まずは一緒に手を動かすということです。自然災害の現場でも、ジャパンハートが200カ所以上活動していた新型コロナウィルスのクラスターの現場でも、1番最初に困っていることはシンプルにマンパワーの話だったりするわけです。
専門的な感染対策のゾーニングのことを聞かれることもありますが、まず現場にいる方々はマンパワーが不足していて、72時間不眠不休で、被災しながらも活動している状況があります。まずその方々の負荷を減らすことが大事だと思っています。負荷を減らすというのはつまり「一緒に手を動かすこと」だと思っています。一緒に手を動かす中で見えてくる課題に対して他の現場も色々と経験している身として100%理想的な状態を自走するって言うより、その現場に1番再現性が可能な、ある意味私たちは撤収した後も継続していけるような支援の内容というのをそれぞれの現場で作っていくことが必要だと考えています。その中でも指示をするのではなく提案していくことが重要なのではないかと思います。
その提案に納得してもらえるかどうかは、こちら側の経験値や、一緒に手を動かしている、つまり現場のことをわかってくれているという信頼感が重要だと思っていますので、まず現場の負荷を減らすことは最初に年頭に置いて活動しています。
自身が大事にしていること
私が南海トラフ巨大地震の発生確率が高いと言われている高知県で育った点も、もちろん大きく影響していますが、災害があった時に被災者の方たちの苦しみや悩みが全く他人事ではないと思っています。
大規模災害が起こった時に、自分や家族も被災し、同じシチュエーションになり得ると常に考え、その時にどういう支援が欲しいだろうかという観点でいつも動いています。
今後の災害に向けてジャパンハートとしての準備
ジャパンハートは、超急性期の救急チームとして現場に入っていくというよりは、急性期から亜急性期にかけて細く長く支援していく団体というのをコンセプトにしています。急性期から亜急性期にかけての課題というのは外傷の治療などの救急医療が必要な医療というより介護の要素が非常に強く、生活支援が密接に関わってくるようなフェーズになっているので、今看護師さんたちがたくさん活躍してくださっていますが、看護の目線を引き続き環境整備含め強化をしていきたいと思っています。
医療から生活に移行していくフェーズをシームレスにサポートできる体制強化を実施して参ります。
ジャパンハートが行った能登半島における支援
ジャパンハートでは能登半島地震の緊急救援活動として、2024年1月4日から4月20日までの間に避難所と診療所への看護師常駐、輪島市門前地域の避難所巡回診療を行ってまいりました。
現在、仮設住宅の開設が進み、避難者数は減少傾向にありますが、ジャパンハートは引き続きニーズに応じた支援を行っています。
その活動の一環として、地域の保健士さんと連携し、仮設住宅に入居されている方々のコミュニティづくりの促進や潜在的な健康問題(医療、介護、福祉面)の拾い上げを目的とした短期イベントを定期的に実施しています。
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皆様のあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。
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ジャパンハートの災害支援・対策(iER)
ジャパンハートの災害支援・対策iER(International Emergency Relief)では、国内外で発生した大規模災害に対応し、緊急医療支援を実施しています。
■2011年3月~2014年3月 東日本大震災緊急支援
■2016年4月 熊本地震緊急救援
■2020年4月~2022年9月 新型コロナウイルス感染症緊急救援
■2021年8月 令和3年8月豪雨災害緊急支援
■2022年9月 台風14、15号緊急支援台風
■2023年7月 令和5年九州北部豪雨緊急支援
今後も現場の支援ニーズを見極めながら、救援活動を継続的に実施していく予定です。
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