初動から活動終了まで
4月30日(木)より、コスタ・アトランチカ号への緊急医療支援活動で唯一初日から撤収まで調整員として入りました、佐々木です。
私はジャパンハート国際緊急救援(iER:International Emergency Relief)の担当として昨年の11月に入職しました。国際緊急救援は主に大規模自然災害での出動を前提としていたため、今回の医療支援活動は、ある意味前例のない医療支援活動の機会となりました。
今回のジャパンハートチームは1陣から5陣まで、合計21名の医療者、非医療者の派遣を行い、アトランチカ号が停泊する三菱造船所香焼工場の仮設診療所にて活動を行いました。
アトランチカ号の状況として、早い段階から個室での完全隔離が行えたこと、船医をはじめとする船内のメディカルチームを尊重した形での医療支援だったこと、感染症専門家による徹底した感染防止対策を実施していたこと、以上のことから現場での混乱はなく落ち着いた医療支援活動を遂行することができました。
また、現場の救護班として長崎県のDMATチーム、自衛隊、他のNGOチームなど様々な救護チームがシフトを編成して24時間体制を構築し、自衛隊からはCT車が提供された他、NGOチームは万が一の船内活動に備え、日々の夜間対応を行い、DMATチームは最終出港までの持続的な隊の派遣など、それぞれの強みを活かした形で現場活動がなされておりました。
ジャパンハートチームは活動初動期には、現場で確立されていなかった患者診療フローの文書化、現場での各マニュアル作り、PPE(個人用防護服)着脱法の事前学習素材の整備など、頻繁な人員の入れ替わりに対応するための医療支援活動をはじめ、実際の船外診療対応、70名を超える大型のPCR検査対応などを行いました。
停泊から約1カ月が経過する最中、船員の帰国のための下船に向けた流れが本格化しました。このフェーズでは多くの船員の方々が陽性から経過観察期間を過ぎ、感染に関わる医療ニーズが減少傾向にあるということでジャパンハートチームは5月18日をもってコスタ・アトランチカ号緊急医療支援活動を終了し現場活動から撤収しました。
活動を通し、現場では、医療の最前線として動く一方、船員の帰国や出港、衣食住など医療を超えた様々な問題が浮き彫りとなる様子を目にしました。
救護班として医療を提供することに一丸となって取り組む一方、現場の皆が船員の方々の生活や実情に対しても配慮し、第一線で活動する姿はとても誇らしく思いました。
私自身は災害担当としての経験は浅く着任から初めての出動ということもあり、チームの調整員として職務を全うできるだろうか…という懸念が強くありました。
事実、ロジスティックスとして現場での職務はとても力不足を感じる部分が多く、DMAT調整員の方々から様々な学びの機会をいただきました。
また、ジャパンハートチームの皆さんにも温かく受け入れていただき、出動から撤収まで無事に活動を終えることができました。
今回の活動を通して、最前線で医療を提供する医療者の熱意やプロフェッショナルに改めて強い憧れを抱きました。私は調整員として、医療を直接提供することはできませんが、医療者の後方支援として現場活動が少しでも的確かつスムーズに遂行できるよう努力しなくてはなりません。
幸いなことに、NGO同士の横の繋がりができたり、災害支援のプロの方々と接したりする機会にもなりました。今後とも、顔と顔が見える関係を深め緊急時に連携できるよう努めてまいります。
この度は水際作戦「コスタ・アトランチカ」の乗組員への医療支援活動に多大なるご支援を頂きまして誠にありがとうございました。
ジャパンハート 国際緊急救援(iER)
佐々木 蓮
▼佐々木 蓮プロフィール
https://www.japanheart.org/about/staff/stf-tokyo-office/sasaki.html