活動レポート

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【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん

up 2024.01.16

ジャパンハートの研修制度「グローバル看護師コース(現メディカルチーム)」の一員として最前線の医療現場で活躍中の看護師の吉田さんと中村さん。日本で看護師としてのキャリアを積んだ後にこの研修に参加した2人に、参加のきっかけや活動への思いを聞きました。

【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん

Q. ジャパンハートのグローバル看護師コース(現メディカルチーム)に参加したのはどうしてですか

A.
中村 — 看護師になって5年ほどが経ち、仕事自体にはやりがいを感じていたのですが「もっと色んな職場を経験してみたい」と思うようになっていました。そうした時にたまたま患者さんのなかにジャパンハート関係の方がいて、その方の話を伺った際、「たとえ生きられなくても、心を救う医療を」というジャパンハートの考え方がとてもしっくりきました。私が看護師として大切にしていたことと重なり、ジャパンハートの理念や活動に心を打たれて一目惚れのような感覚で参加を決めました。

吉田 — 私の場合は「看護師になりたい」よりも「途上国支援に携わりたい」という思いの方が先でした。もともとは英語の教師など教育関係で支援にあたりたいと考えていて、大学時代には休暇を使って1人でアフリカやインドに渡ったこともあります。ただ、各地を回るなかで看護師さんなど医療関係の方々に出会い、次第に看護師を目指すようになりました。大学を卒業してから看護学校に入り直し、看護師としてある程度キャリアを積んだ頃、「海外の現場で活動できる団体を」と探してジャパンハートにたどり着きました。

Q.はじめは国内研修で山形県の病院に行かれたそうですが、どうでしたか。

A.
吉田 — 半年間、山形県新庄市にある新庄徳洲会病院で活動させていただきました。豪雪地帯で高齢化が深刻な地域ということもあり、現場の支援にあたるだけではなく「外の目線から新庄の魅力を発見し、アピールしていく」という目的もあったのですが、本当に居心地が良くて新庄が大好きになりました。

中村 — 「地域密着の医療機関での勤務」ということ自体が初めてで、患者さんたちとのやり取りを通して土地を知り、たくさんの魅力を教えてもらいました。本当に素敵な場所で、日本に戻ったら改めて足を運びたいと思っています。

【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん

Q. 去年の春以降は、ミャンマーとカンボジアの両方で経験を積まれています。東南アジアでの医療活動への戸惑いなど当初の印象を教えてください。

A.
吉田 — ミャンマーを希望して行ったのですが、最初はとにかく「暑さ」に戸惑いました。停電している時間も長かったので暑さをしのぐ方法がなく、気付くと体に発疹ができていて、本当に悩まされたのを覚えています。

中村 — 水にぬれたタオルを体にあてて「とにかく動かない」ことで耐えようとしたり…。あの暑さは本当に強烈でした。ただ同時に、厳しい暑さや長時間の停電のなかでも患者さんたちがとても穏やかで、患者さんと接するなかでふと我に返って「あれ、何で私だけこんなにイライラしているんだろう」と感じたことも印象に残っています。

吉田 — エコー検査がしたくても電気が来ないからできない、というようなことも日常茶飯事でした。患者さんでごった返し、扇風機も回らない院内で何時間も待ってもらうこともあったのですが、待たされてイライラしたり文句を言ったりする患者さんはいませんでした。日本人からすると不便な環境でも、それにジッと耐えているというのでもなく、平然としているというか。当たり前にご家族同士、患者さん同士で支え合っていて、現地の皆さんの穏やかさ、たくましさから学ぶことばかりでした。

【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん

Q. 医療環境も日本とは大きく違うと思いますが、どのように工夫しましたか。

A.
中村 — 日本にいた時以上に「言葉だけではないコミュニケーション」を重視するようになりました。はじめの頃は患者さんとやり取りする際に、通訳も兼ねてミャンマー人の看護師に付いてもらっていたのですが、それでも細かい部分の体調の変化や困りごとを把握するのが難しく、いつも「何か大事なことを取りこぼしていないだろうか」と不安に感じていました。もちろんミャンマー語の勉強もしつつ、ただそれだけでは限界があるので、ご飯は食べられているか、体はどれくらい動かせているかなど、自分の目で患者さんの経過をよく観察するようになりました。

何もかもが初めてで、自分ができることの少なさを痛感し、戸惑うことばかりでしたが、だからこそ「努力するしかない」と腹をくくって過ごすようになったと思います。医学書を何度も繰り返し読み直し、2人で音読したこともありました。自分のこれまでの経験と知識をかき集めて、今できる最大限のことをしようと、ただひたすら目の前の患者さんに向き合ってきたように思います。

吉田 — 特にミャンマーは医師が少なかったので、医師の指示を待たずに看護師が率先して動いていました。「看護師だから」「医療者だから」というのではなく、誰もが「自分に出来ることは何でもやろう」と高いモチベーションをもって働いていました。

そういう環境だったので、私も最低限のもので最大限の医療を届けるにはどうすれば良いか、自分の頭で色々と考えるようになりました。医薬品も日本とは比較もできないほど少なく、塗り薬すらない時もありました。その場にある物で対応しなければいけないので、傷口を洗う回数を増やしたり、ガーゼも節約しながら使ったり、調理用のラップで代用してみたり…。工夫の結果、患者さんの症状が改善するとみんなで喜びました。

【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん

Q. ミャンマー、カンボジアと活動するなかで、医療に対する考え方は変わりましたか。

A.
中村 — 目の前に患者さんがいることが当たり前ではない、目の前の患者さんを治療できることが当たり前ではない、ということを身をもって知りました。何かが少しでも違っていたら、この患者さんは病院にすら来られなかったかもしれない、たまたま色々な歯車が合ったことでここまでたどり着いて医療を受けられる。それに気が付いてからは患者さんとの向き合い方が変わりましたし、それまで以上に「今できる全てをしたい」と思うようになりました。

【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん

吉田 — 治療で症状が良くなることはもちろんですが、それ以外の部分でも患者さんの人生に関われることに大きなやりがいを感じています。ある時、生後3カ月の女の子が運ばれてきました。母乳を飲む力もないほど弱っていて、手術をしても助けてあげられるかは分かりませんでした。それでも私たちに出来る最大限のことをしようと、手術をし、寝る間も惜しんで看護を続けました。

術後の容体が落ち着いた頃、お母さんに「赤ちゃんに何かしてあげたいことはありますか」と尋ねると、すぐに「母乳をあげたい」と返ってきました。聞けば私たちの病院に来てからだけでなく、生まれてから1度も母乳を飲ませてあげられていなかったそうです。

そうして、生まれて初めて母乳をあげる瞬間をみんなで見守りました。赤ちゃんが母乳を飲んでくれた時のお母さんの笑顔は一生忘れません。命の長さは変えられないかもしれませんが、患者さんが望むこと、ご家族が望むことを最大限に叶えてあげたい。それこそが「心を救う医療」「心を救う看護」なのかなと思っています。これからも医療の枠にとどまらず、私に出来ることをしていきたいです。

Q.最後に今後のキャリアの展望などを教えてください。

A.
中村 — 正直なところ、今とても迷っています。これまでは「今までの経験を活かしていかなければ」とどこか気負っていたのですが、カンボジアに来てから色んな職種の方と話す機会が一気に増えて、今自分がここにいることへの感謝の気持ちを再確認することができました。目の前に患者さんがいるのが当たり前ではないということ、明日が来るのが当たり前ではないということ、そして自分自身の家族が健康でなければ今ここにはいられないということも改めて感じています。そうした気付きや感謝を大切にしながら、自分が貢献できる場所を探していきたいと思います。

吉田 — 私は「自分で考えて活動できる看護師になりたい」と思ってきました。これからも1人ひとりの患者さんに密着できるような環境で、「生きてきて良かったな」と思ってもらえるような瞬間を届けていきたいです。また、もともと貧困に苦しむ子どもたちを救いたいと考えてきたので、この体験を広く伝えていきたいとも思っています。

【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん吉田夕佳 グローバル看護師コース(現メディカルチーム)60期生
神奈川県出身。4年間の看護師経験を経て参加。「看護師5年目となりさらにスキルアップしたいと感じ、かねてから夢であった国際医療分野に携わりたく参加を決めました」


【Voices of Japan Heart】Vol.6 看護師 吉田夕佳さん、中村夏海さん中村夏海 グローバル看護師コース(現メディカルチーム)60期生
千葉県出身。7年間の看護師経験を経て参加。「『たとえ死んでも心救われる医療』という言葉に感銘を受け、誰かのためであると同時に自分の成長に繋がることが出来ると思い参加を決めました」

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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