日々、小さな身体で一生懸命病気と闘う子どもたち。
一定期間をこの病院で過ごす子どもたちは、毎日いろんなことを学び成長しています。
始めはお母さんから離れなかった子が、次第に他の子どもたちと仲良くなる様子。
家では末っ子なのに、ここではみんなのお兄ちゃんとしてしっかりリードしている様子。
給食を食べようとしなかった子が、ある日完食して笑顔でお皿を持ってきてくれる様子。
そんな子どもたちの小さな成長を見れると、心から嬉しく、彼らの完治と健やかな未来を改めて願う機会になります。
栄養管理部では、子どもたちが食事を楽しみ、日々の給食を「作る人と患者さん」や「患者さんとその家族」が繋がるきっかけづくりになってほしいと、様々な取り組みを始めました。
一つ目は、お母さんたちが一緒に成長を見守れるよう、一人一人に合わせて作成した成長曲線。
キッチンスタッフが色分けを行い、一目見ただけで子どもたちの状態がわかるデザインに。
ここに、毎月測定した身長体重を元にデータを記入し、ご家族とカウンセリングしながら適切な食事摂取を目指していきます。
学校給食が日本のように一般的ではないカンボジア。
家庭科の授業は「社会科」の一項目として小さくまとめられ、中学過程で料理法を少し習う程度です。
その中学校就学率も50%程度と少なく、全ての人が栄養バランスや健康についての基礎的な知識を得ることは難しい状況と言えます。
実は、カンボジアで子どもが生まれたときに配られる母子健康カードの裏面には成長曲線が載っています。ただ、定期検診等もまだまだ浸透しておらず 活用できているとは言い難いのが現実です。
ここの病院で過ごす子どもたちの中には大きい腫瘍を抱えている子も多く 、療養過程で体重が大きく変動します。
そのため、栄養管理部では他にも脂肪量・筋肉量の推移等を見ながら対応していますが、一目で子どもたちの様子がわかる成長曲線は、お母さんたちにとって少し安心してもらえるきっかけづくりとなっています。
先月よりもこんなに大きくなったよ、今日は全部食べれたよ!などと報告してくれる家族も増えてきて、 日々の闘病生活に小さな喜びを生み出せていることをとても嬉しく思っています。
日本では、簡単に入力するだけで健康管理してくれるアプリがあり、少しネットで調べれば多くの情報を得ることができます。
ただ、カンボジアでは栄養や健康に関する情報を、自分の言語で集めるのは容易ではありません。中には文字が読めない人だっています。その違いが、自分や子どもの健康に直結してしまうのは残念でなりません。
国の保健システムや栄養政策がもたらす影響、貧困や格差といった社会的影響、地理や気候による食糧アクセスの影響 と、様々な要素が相まって一人一人の健康状態を複雑なものにしていることを理解したうえで、どうやったら必要性をわかってもらえるのか、負担にならず、主体的に取り組んでもらえるのか、を一つ一つの活動に問い続ける必要性があると考えています。
また、安定して多様な食事を提供できるように、毎週献立を事前に作成する取り組みも始めています。
(拡大はこちら)
カンボジアでは、国全体で食事内容の偏りによる栄養課題が多く報告されています。
小児がんの患者さん、そのご家族やここで働くカンボジア人スタッフたちも目にする日々の給食で、様々な食材を使用し、口にする食事を多様なものにすることで、多くの学びや喜びを提供できる機会になればと思っています。
わたしたちは医療団体です。
栄養管理も医療の一環として行い、そのために患者さんたちには毎日3食無料で食事を提供しています。
ただ、食事が他の療法と異なるのは、そこに喜びや繋がりを感じさせてくれるところにあると考えています。
慣れている味を食べると嬉しいと思う。家族と一緒に食べると、もっとおいしくなる。
栄養概念がまだまだ根付いていない地域で栄養管理を行うには、 そんな喜びや繋がりを感じられるように調理を工夫し、食文化への深い理解と尊敬の意を持って日々活動することが大切だと考えています。
まだ赴任して2ヶ月と、新しい発見ばかりの毎日ですが
このような機会をいただけていることに感謝し、少しでも多くの笑顔を食事から生み出せたらと思っています。
栄養管理部 栄養士 川合