私は、ここカンボジアにきて携帯電話を携帯するようになりました。
なぜなら、今私の電話が一人の赤ちゃんを救う命の電話にもなるからです。
日本では仕事中に携帯電話を見るなんて絶対にしないことですが、PHSなど便利なものがないこの地では日常のやりとりを電話やSNSのメッセージを利用して行うことが多いです。
なので、スマートフォンを持っていないと連絡が取れなかったり、タイムリーな連絡を逃してしまいます。
実は、私は日本にいるときには携帯電話への執着が全くなく、携帯電話を忘れることなんて日常茶飯事。上司に「頼むから携帯を携帯してくれ」と言われるほどでした。
ですが、最近は仕事はもちろんですが、ご飯を食べに行くとき、シャワーに行くとき、トイレに行く時すら携帯電話を持っていないことに気づくとソワソワします。
ジャパンハート の病院では現在は産婦人科医在中の時以外は分娩を行っていません。連携する病院で分娩は行われます。月に70ー80件の分娩がありますが、生まれた赤ちゃんの状態が悪いときには私たちの蘇生の手伝いが必要になることがあります。
実は以前は生まれて5分泣かないから私たちを呼ぶということがよくありました。
泣かなかった赤ちゃんを連携病院の助産師が抱いてゆっくりと私たちの病院に向かってくることもしばしばです。
出生後の赤ちゃんの蘇生は初めの1分が大きく影響します。私は分娩に立ち会う回数をできるだけ増やし、早期に介入することの必要性をわかってもらうように工夫を続けています。また、しつこく早く呼んで欲しいということをお願いし続けてきました。そして、自分の電話番号を助産師の部屋にも置いてあります。その甲斐あってか、今は前に比べると早めに声をかけてくれるようになった気がします。
9月は1ヶ月に3回の彼女たちから電話があり、他にも当院の助産師が立ち会って蘇生が必要なケースがありました。
1回は私が到着すると啼泣(ていきゅう…泣くこと)を開始していたケースでしたが、他の二件は啼泣がなく、蘇生が必要なケースで、うち一件は当院ではその後のケアが困難なため器官挿管をして搬送したケースもあります。
毎回赤ちゃんを蘇生して、状態が良くなったり、搬送を終えたりすると、”呼んでもらって良かった”と思います。
私は少しの手助けで助けられる命を助けたいと思い、JHで活動しています。この数分を大事にしてこの地域で生まれる赤ちゃんたちの手助けができるよう、これからも”携帯電話を携帯”して備えていきたいと思います。
ジャパンハートこども医療センター 周産期事業部 西川
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医療支援| カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動