総勢100人以上のスタッフが勤務するカンボジアの「ジャパンハート医療センター」。 医師や看護師のほかにも、さまざまな職種が集っています。
今回はそのなかで「臨床検査技師」の仕事に密着します!
病院ただ一人の臨床検査技師
臨床検査技師の米倉惟さん。
スタッフからは「ゆいさん」と呼ばれています。
ジャパンハートに参加する前は、ラオスで魚の養殖技術の普及に携わり、帰国後に臨床検査技師の資格を取ったという惟さん。その興味深すぎる経歴については後日改めてお伝えするとして、今回はカンボジアでのお仕事に密着させてもらいます!
小児がんの診断を左右する骨髄検査
現在、「ジャパンハートこども医療センター」のスタッフのうち臨床検査技師は惟さんただ1人。なので、時間も休日も関係なく検査の依頼が舞い込んできます。
臨床検査技師・米倉惟さん
この日も朝から検査の依頼が入ってきました。
「骨髄穿刺(こつずい・せんし)」という検査です。
骨髄は血液を造り出す場所で、骨髄細胞に異常がないかを調べる「骨髄穿刺」は、今後の治療を左右する重要な検査です。
この日は小児がんの疑いがある女の子について調べることになりました。
時間との闘い
この検査は何よりもスピード勝負。
医師・看護師・臨床検査技師が一丸となって骨髄穿刺検査に挑みます。
採取した骨髄液は、すぐさま適切な処理を行わなければ正確な検査ができません。
ゆいさんはベットサイドに待機し、医師が腰骨に専用の穿刺針を刺して採取を終えた瞬間、身を乗り出して即座に検体を回収しました。
検体を回収
骨髄液は採取後すぐに固まってしまうので、迅速に作業を進めなければなりません。
骨髄液をスライドガラスに薄く伸ばし、その後、手作業で染色していきます。
また、検体がきちんと骨髄から採取できたかどうか機械と目視で確認します。
機械だけでなく目視でも確認
次は染色専用の検査室に移動します。
検査項目によって染色方法が異なるため、染色液の調整・染色時間などを確認しながら作業を進めます。
検体を染色していく作業
欠かせない存在
約30分後、染色作業が終わりました。最後に顕微鏡で骨髄細胞を確認します。
この結果によって、患者さんの転移の有無がわかり今後の治療方針が大きく左右されます。
こちらが、今回の患者さんの検体です。
今回の検体
色が付いているのが骨髄の細胞です。
丸いものや角張ったもの、色々な形や大きさで点在しているのが分かります。
骨髄転移が認められた患者さんの検体
こちらは、今回の女の子とは別の患者さんの検体で、骨髄転移が認められました。
同じような特徴の形をした腫瘍細胞がびっしりと集まり、花びら状に集中しています。
医師によるダブルチェック
医師にも確認をしてもらった上で、今回の検査からは実施した女の子は「現時点で転移の可能性は低い」という結論になりました。
今後、さらなる検査を実施した上で、治療観察を続ける予定です。
小児がん治療の根幹を支える臨床検査技師。
医療設備が限られたカンボジアの地で小児がん治療を行うジャパンハートにとって、絶対に欠かせない存在です。
今後も臨床検査技師の仕事、そして謎多き惟さんのこれまでの経歴や熱い想いをドンドン堀っていきます!
米倉 惟 カンボジア長期ボランティア / 臨床検査技師
2023年2月からカンボジアで検査技師として活動している米倉です。大学卒業後は青年海外協力隊に参加し、ラオスで魚の養殖技術の普及に努めました。その後、「医療従事者として海外で活動したい」という想いから臨床検査技師になり、ジャパンハートに参加しています。
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カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動