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「命と向き合う現場で見つけた答えとは」- ジャパンハート現地視察ツアーレポート 楽天CWO 小林 正忠 様

up 2025.02.07

ジャパンハートの活動を知ってもらうために開催されている「ジャパンハート視察ツアー」。5日間でカンボジアとミャンマーの各施設を周り、実際のリアルな現場の様子や子どもたちとの交流を通じ、参加者は“何を持って帰ってきた”のでしょうか。今回はツアー参加者の1人である楽天CWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)の小林正忠氏に、ツアーに参加したきっかけや、ツアーに参加して感じたことなどを伺います。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

キッカケは「彼らはなぜそこまでできるの?」という疑問

— まずそもそもジャパンハートの活動に興味を持ったのはいつ頃からでしょうか?

小林だいぶ早い段階から、おそらくメディアを通してジャパンハートの活動や吉岡先生を存じ上げてはいたと思うのですが、急激に縮まったのは去年の「ジャパンハート設立20周年記念チャリティーディナー powered by ICCパートナーズ」です。
このイベントの前に吉岡先生との食事会があり、そこでリアルなお話を聞いてグッと惹かれたと同時に、「同じ日本人として、なぜここまでできるんだろう?」という単純な疑問が生まれたんです。
実際に先生はかなりのハードワークな上に、常に死が隣り合わせという過酷な状況なのに、一切休むことなく情熱を注いでるんですよね。
そしてそれは、先生のパートナーであり、小児科医で理事長の吉岡春菜さんに対しても思う部分で、「いつ死ぬのか分からない人を支えられるとは、どういうことだろう」と思っていました。
ですから、ジャパンハートへの支援は最初から決めていましたが、その前に現地に足を運んで体感することから理解できることがあるかもしれないと考え、そのイベントで隣にいた旭酒造の桜井さんに「一緒に現地に行きましょう」と話し、ツアーの参加を決めました。

— 「その疑問の答えが現場にあるのでは」と思ったのですね。
とはいえ、ただでさえ多忙な上に、カンボジアとミャンマーもなかなかアクセスしづらい場所かつ、ミャンマーの方は治安も良いとは言い切れないような状況ですよね。それでもやはり行くべきだと思われたと。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

小林ツアーの日程は、吉岡先生が行く日に合わせて事前に決まっていたので、私はその日程の前後に隣国での仕事を入れたりして調節しました。そこまでしてでも、やはり疑問の答えが知りたかったんです。
そして実際に行ってみて、手術室で命に向き合っている先生の空気感に触れた時に「これか」と確信しました。

現場にある「熱量」の正体

— 実際に触れて感じた「手術室の空気感」とはどういったものだったのでしょうか。

小林あの時のことを思い出すと、今でも胸が詰まって言葉にならなくなってしまうのですが…。
私たちはカンボジアの病院で、医療スタッフの方と同じ手術室ガウンを身にまとって実際に手術をおこなっているオペ室の中に入らせてもらいました。(※)
ここでは日々、様々な子どもたちが手術を受けていて、その日も多くの子どもたちが自分の順番が回ってくるのを心待ちにしているような状況でした。
吉岡先生と私たち視察ツアーのメンバーは、そこまで一緒に向かっていたのですが、さっきまで普通に話していた先生が、手術室に入った瞬間に豹変したんです。
それは「本当の吉岡先生になる」というか、命と向き合っている一人の医者そのものになった瞬間という感じでした。
そしてそれに呼応するように、ドクターやナース、そして患者自身も含めて、手術室にいる人全員が一体となって、ただ一つの命に全力で向き合っていました。
想像を超える熱量と緊張感の中、彼らの一体感が手術室の空気を満たしていて、うまく言葉に出来ないのですが、これまでの人生でも感じたことのない感覚でしたね。

(※)患者様とご家族に許可を得たうえで見学・撮影しています

— 普段の生活では確実に触れられない空気感ですね。それにしても、吉岡先生のみならず、チーム全体で高い熱量を持たれているのですね。

小林先生のすごいところは、目の前の子を助けながら、未来の子を助けるために活動しているところです。
現地でも「自分が死んでも、世界中で子どもは生まれてくるから、医療が受けられる社会を作らなきゃいけない。そのためには医師を一人一人育てていくしかない」と話していた通り、「全部俺がやる」ではなくて、自分が責任を取れる範囲でどんどん若手に経験させていましたね。
そういった視点を持っているからこそ、誰も置いていかず「一体感」が生まれているんだと思うのです。
常に大きい未来を見ていて、これは経営者と同じ目線ですよね。
今月の売上や利益だけじゃなく、100年先をどうしていくのかを明確にチームと共有していて、チーム全員がそれに共感している。
だからこそ、それぞれが主体性を持って働けているんだなと感じました。
この実感は、講演や会食では伝わりづらい、現地のあの空気感に触れなければ絶対に感じられない部分で、ビジネスマンとしてもすごく学びになりましたね。

— 確かにチームビルディングという観点から見ても理想的と言えますね。

小林私はチーフ・ウェルビーイング・オフィサーという肩書きですが、ウェルビーイングについて「自分らしく生きる」と定義しています。だからウェルビーイングを「高い・低い」ではなく、「自分らしく生きる」ことから「遠い・近い」という表現を用いています。それで今回のツアーで痛感したのは、吉岡先生ってめっちゃウェルビーイングだなと思ったんです。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

— なるほど、そう思ったのはどの辺りからなのでしょうか?

小林講演とかでも「すごい志の高くてエネルギーに満ち溢れた人だな」といった印象を持っていたのですが、実際に手術室で医療行為をしている先生は、目の前の命を救うことができることに、心から幸せそうなんです。
だからどんなに過酷な生活でもハードワークであろうと、現地で命と向き合ってる吉岡先生は誰よりもウェルビーイングで、これこそがこのツアー参加のきっかけとなった疑問に対する答えなんだと実感しました。

プロジェクトメンバーという「主体性」

— ここまでは主にジャパンハートチームについて伺ってきましたが、ここからは実際にツアーに参加してみて、小林さん自身にどのような影響があったのかを聞いていければと思います。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

小林一番はジャパンハートを「壮大なプロジェクト」と捉えるようになったことです。
単純にNGO組織としてだけではなく、多くの人を巻き込みながら未来永劫続いていくプロジェクトなんだと。
さらに、ツアーに参加して「今このプロジェクトに何が必要なのか」を肌で感じ取ることによって「こうすれば問題を解決できるかも」という思考になります。
それはつまりプロジェクトメンバーに昇華するという感覚。
私は医療従事者ではないので直接できることはありませんが、何かの形でこの輪に加わってプロジェクトを続けていこうって思えている状態。
ツアー参加前は「どうしてここまでできるんだろう」って思っていたのに、今はすっかり「自分に何ができるだろう」って主体的に考え続けられています。

— ツアー参加者からプロジェクトメンバーに昇華することで、主体性が生まれた。それはすごく大きな変化ですね。

小林そもそもこのツアーの参加者が、会社も年齢も立場も異なる人たちの集まりだったこともよかったと思います。
それぞれ得意なことが違うから、よりその部分が際立って「自分の得意なことをプロジェクトにどう活かしていくか」が明確になるんですよね。
だからそれぞれ自分なりの繋がり方で、このプロジェクトに関わり続けていくことができるのだと思います。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

— その点もみんなが主体性を持つことができる要因の一つですね。

小林そうですよね。
あとは「よくなる未来が保証されている」という面も大事だと思っています。
というのも、今のミャンマーやカンボジアなどの医療レベルは、ひと昔前の日本と言っても過言ではない。例えば病室に冷房が無いとか、待合室に人が溢れて不衛生だとか、そういう状況。
ということは少なくとも今の日本レベルまでは想像可能なので、すごく現実的な未来なんですよね。
その上で、ITも含めてこのジャパンハートのサクセスケースが横展開されていけばいいなと思っています。
例えば“インドネシアハート”とか”フランスハート”とかが世界中で多発したら、世界は大きく動くのではないかと思うわけです。
そういう意味でも吉岡先生がご自身の人生を捧げて切り開いている最初の一歩は偉大で、プロジェクトメンバーともみんなで「どう支えていくか」を考えています。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

未来に繋がり続ける

— 最後に、ツアー全体を通して感じたことや、今後ツアーに参加予定の方へのコメントがあればお願いします。

小林私の個人的な意見としては、自分で「心を揺さぶるものを掴み取りたい」と思っている人こそ、このツアーに向いてる気がします。
「何かしてくれるんですよね」みたいな受け身だと、思っていたものと違うかもしれないし、とにかくジャパンハートのスタッフはもちろん、なぜかツアー参加者もすごく前のめりな人たちが集まっているので。

— それこそツアーが始まる前からもう主体性が始まってるということですね。

小林そうですね。
あとは、私のように吉岡先生の活動をTV番組や講演とか記事で知って「どうしてここまでできるんだろう」って思った人は、その答えを現地で見つけることができます。それは間違いありませんね。

— まさに「経験者が語る」ですね。

小林さきほども言いましたが、このプロジェクトは壮大すぎて、ずっと続いていくと思うんですよね。
そしてこのツアーがきっかけで生まれたプロジェクトメンバーそれぞれの「自分に何ができるのか」という問いも、今後も姿形を変えながら問い続けるんだと思います。
だからここで繋がったプロジェクトメンバーとはずっと繋がっていくだろうし、今後も繋がりは大きくなっていくのでしょうね。
シンクロの西井さんが「可能な限りずっとジャパンハートを支援します」と宣言しているように、私もこのメンバーとしてずっと一緒にやっていきたいと思っているし、このメンバーであることは私の誇りです。

「ジャパンハート現地視察ツアーレポート「命と向き合う現場で見つけた答えとは」」楽天CWO 小林 正忠

(取材日:2024年11月 writer:越野和馬)

プロフィール

小林 正忠
楽天グループ株式会社 CWO常務執行役員 Chief Well-being Officer

1994年慶應義塾大学卒業(SFC1期生)。1997年の楽天創業から参画し、ショッピングモール事業責任者として営業本部、大阪支社、マーケティング部門、国際事業等の立ち上げを行う。2012年4月米国へ赴任し米州本社社長を務め、2014年9月シンガポールを拠点とするアジア本社の代表を歴任。2017年より人々を幸せにする役割を担う「CWO:チーフ・ウェルビーイングオフィサー」就任。2001年慶應義塾大学に「正忠奨学金」を創設するなど若者の育成に力を入れている。

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