私は高校生の時にアフリカの飢餓問題を勉強し、その時アフリカで働く医者になりたいと思いました。医師になって1年目に初めてジャパンハートの手術活動に参加し、診療に使える機器が限られた環境での医療活動を見て以来、検査に頼らずに診療できるよう初期研修医として勉強を続けてきました。医師3年目になり、今回はカンボジアで長期ボランティア医師として活動に参加しました。今回そこで感じたことを共有させていただきます。
医師としてはもちろん、人としての気付きがありました。
ぶつかり合う勇気
日本では医師の指示に従うのが当然です。しかしカンボジアでは納得しないと指示に従ってくれません。納得してもらうためには説明が必要、時には意見が分かれることもあります。それでも意思を伝え議論するために必要なのは勇気かもしれません。私は人と意見がぶつかることが苦手で、当初は安易にOKと言ってしまいました。しかしカンボジア人スタッフは納得するまで話し合うことを求めているように感じました。自分の意思を言葉が下手で時間がかかっても、安易な同意ではなく納得するまで話し合う必要を感じました。日本人メジャーリーガーは言葉以上の意見の壁にぶつかると聞きます。プロフェッショナルとして異国の地で活躍するためには、自分の考えを否定される覚悟、その地の文化に合わせつつも自分の考えを説得する勇気が必要なのだと感じました。
私たちにとっての当たり前が当たり前でない
ぶつかりあうのは私たちにとっての当たり前が当たり前ではないため仕方のないことかもしれません。ひとつずつ何故?を話し合うことはカンボジア人にとって新しい学びになります。ひとつひとつの議論がジャパンハートに関わる現地医療者の成長となり、今後の彼らの活躍につながるかもしれません。吉岡先生が仰るように、今後はインターネット等で知識は標準化されますがケアの質が違いを生みだすのでしょう。将来的にカンボジア人スタッフが活躍できるように、日本NGOとして質の高いケアを求めて日々議論し続けることは大事なことだと思います。
教えることは愛
今まで自分自身の成長を求め3年間教えを乞う生活を続けてきました。これまで教育することには全く興味はなく自分自身が実践できればそれでよいと考えていました。しかし海外では自分の考えを伝える必要性を感じました。院長の神白先生はカンボジア人医師の質問にひとつひとつに時間を惜しまず対応していました。教育はその医療者の今後の成長のための愛だと感じました。活動を終えて、私も幅広い学びとそれを説明できる医師になりたいです。
また、ジャパンハートカンボジアに勤務する日本人看護師はカンボジア人スタッフにその都度、その瞬間に指導しており、言葉の壁はあれど躊躇はありませんでした。患者さんに寄り添う態度はカンボジアスタッフへの手本であり、看護の質がまだ重要視されていないカンボジアにおいて、患者さんが“入院してよかった”、スタッフが“就職してよかった”と思えるジャパンハートの病院の価値を生み出すのだろうと思いました。
出会い
今回、院長の神白先生に出会い、内科に限らず角膜異物除去や手術も行う姿をみて、私にとって海外で働く総合内科医のロールモデルとなりました。始めからお手上げではなく、私たち医師に経験と技術があれば患者さんに手間とお金の負担なく治療ができます。専門医でなくでも専門治療の知識をもつ、手技を経験することを積み重ねていけば一人でも多くの患者さんをこの病院で助けることができます。紹介状を書くことは簡単ですが、患者さん負担を考えるとできるだけ自分で対応できる医師になりたいと思いました。
知識と経験が多いほど患者さんにより良いケアを提供できます。今後も、より多くの患者さんを安全に確実に治療できるように、勉強し成長してカンボジアにもどります。カンボジア人スタッフには本当に親切にしていただきました。皆とまた会いたいと強く思います。
長期ボランティア医師 濱野 淳朗