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カンボジア 小児がん病棟日誌「出張アート教室」

up 2023.07.24

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

皆さんこんにちは。カンボジアの「ジャパンハートこども医療センター」で学生インターンをしている田井です。
小児がんで入院中の子どもたちは、長期間の入院生活を強いられます。
そんな子どもたちにとって入院生活の息抜きになるような、そして皆で楽しみながら学べるような企画が出来ないかと考えてきました。

そこで今回、私たちインターンが中心になって開催したのが「アート教室」です。

外部から講師を招き、準備段階から多くの苦労がありましたが、笑顔あふれる大満足の時間となりました。今回の活動レポートでは、そんな教室の舞台裏をお届けします。 (田井遥香 長期学生インターン)

1日の大半はベッドの上 私たちに何ができるか

小児がん病棟の子どもたちのために、何かしてあげられないか。
そう考え始めたのは、私がカンボジアに到着して直ぐのことです。

治療で免疫力が下がった子どもたちは、病院の敷地内すら自由に動き回ることが出来ません。感染症等を防ぐため、建物の外に出たり、違う病棟に行ったりすることは許されていないからです。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

日本であれば「院内学級」がある医療機関も多いと思いますが、ここはカンボジア。
治療以外の時間の過ごし方と言えば、おもちゃで遊んだり、お母さんやお父さんのスマホで動画を見たりという感じでした。

1日のほとんどの時間をベッドの上で過ごす子どもたちにとって、少しでも息抜きになるような、同時に学びにもなるような企画が出来ないか。
そう考えた私たち学生インターンは、医療スタッフに相談しました。

すると、医療スタッフの反応も上々。
実際にどんな企画が出来るか、すぐにリサーチを始めました。
まずは身近なところから情報収集をするため、私の通う大学で院内学級・病棟保育について研究されている教授にお話を伺うことに。
実際に病院でどのような取り組みが実施されているのか、またどのような目的で行われているのかなどについてお聞きしました。

お話を伺うなかで、外部とは閉ざされた病院という特殊な環境だからこそ、工作やお絵描きなど「何かを作る」という体験を通して自分を表現することの重要性を強く感じました。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

選んだのは「アート教室」!

そこで、私たちがテーマに選んだのは「アート教室」です。

簡単な折り紙や塗り絵であれば私たちでも教えられますが、子供たちが触れたことのない芸術的なコンテンツを通して、新たなインスピレーションや創造力を与えることはできないできないか。

そう考えリサーチを進めていた時、私たちの要請に応えてくださったのが「Social Compass(ソーシャルコンパス)」という団体です。

アニメーション制作を中心にカンボジア各地で活動していて、日本人の現代芸術家・中村英誉さんが代表を務めておられます。アートやデザインを通して環境問題や教育といった社会問題の啓発に取り組む団体です。

「これまで農村部の子供たちにアートを届けてきましたが、まだアートを届けることができてない場所の一つに病院がありました。長期入院を余儀なくされている子どもたちのために何かできないかとずっと思っていたので、今回声をかけてもらえて嬉しいです。アートを通して子どもたちに笑顔を届け、治療への活力になるような時間になればと思います」。

「Social Compass」の皆さんは私たちのオファーに対してそんな嬉しい言葉をかけてくださり、感激しました。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

【左・カンボジア人デザイナーのジェシー・アンさん、右・代表の中村さん)。 】

初めてのアニメーション制作 子どもたちも大興奮

おふたりが今回のイベントのテーマに選んでくださったのは、「アニメーション」。

思い思いのキャラクターを描き、それをコマ送りで撮影してアニメーションをつくるという、どこか懐かしい、でも大人でもワクワクする企画です。
最初に取り掛かったのは、キャラクターづくり。
画用紙に色とりどりのペンで描いていきます。
ところが、ペンが動かない子どもも少なくありません。
「キャラクターを描いてみて」と言われても、何から始めたら良いか分からず、戸惑ってしまったようです。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

【アドバイスを受けるヴィト―くん 】

ヴィトーくんもそんな1人。
大好きな木をモチーフにしたキャラクターを描きたいようでしたが、どこか困った表情で、描いては消して、描いては消して。

それを見た中村さんやジェシーさんが、すかさずアドバイスをくれました。
「〇を組み合わせるだけでも良いんだよ」と伝えたり、お手本を見せたりしながら場を盛り上げたり。
すると、子どもたちもお母さんもどんどん夢中になって、カラフルで個性的なキャラクターが完成しました。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

いざ撮影 キャラクターが動き出した!

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

キャラクターが完成したら、ついに撮影です。
スマホを床から離れたところに固定して、コマ送りの要領でキャラクターを少しずつ動かしながら写真を撮っていきます。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

とにかく夢中でパシャパシャ。
そして、いざ撮った写真を繋げてみると、、、アニメーションになっています!

キャラクターがまるで生きているように動いて、子どもたちや保護者から歓声が上がりました。皆が喜ぶ姿が見られて、私もとっても幸せな気持ちになりました。

小児がん病棟日誌 「出張アート教室」 カンボジア

病院内という特殊な環境で入院生活を送る子どもたち。
どうしても同じような毎日の繰り返しになってしまいますが、そうした日々のなかで、今回のアート教室は大きな刺激になったのではないかと思います。

いわば自分の分身のようなキャラクターで、目いっぱいに思いを表現する「アニメーション」。最初こそ戸惑っていた子どもたちですが、実際にキャラクターに息が吹き込まれると、ワクワクした表情で映像を眺めていて、見ているこちらまで感激しました。

学生インターンとして、私たちに出来ることは何か。
これからも考えながら、子どもたちに寄り添って活動していきたいと思います。

田井遥香 長期学生インターン カンボジア田井遥香 長期学生インターン

2023年4月からカンボジアでインターンをしている田井です。
国境を越えた多くの方々に小児がんやカンボジアの医療現場の現状を届けていくと共に、非医療資格者として子供たちの心や人生を救う活動の一端を担えたらと思っております。


▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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