去年の夏に高校生限定のスタディツアーに参加しました。
スタディツアーでは、カンボジアの経済、文化、医療の途上という現状の背景であるポルポト政権について学び、ジャパンハートの理念を知り、少しだけジャパンハートこども医療センターでの清掃などのボランティアをした後、手術の見学をして帰国しました。初めて知るポルポト政権の歴史は衝撃的であり、初めて手術室の中に入り間近で見る手術は感動を覚えました。ただ、スタディツアーでは肝心のボランティアがほとんどできなく「ボランティアをしたい」という思いで、今回は短期ボランティアに参加しました。
今回の短期ボランティアを振り返って、僕は参加してよかったと思いました。なぜなら、ボランティアの活動を通して、自分がいろんなことを学ぶことができたからです。病院の掃除や洗濯物の片づけから、入院患者の回診でのバイタルチェックや、入院患者の受付、手術器具の洗浄と、自分は高校生なので、医療現場ではできることに限りがあったものの、最大限に活動させてもらいました。
また、カンボジア事業を立ち上げた看護師の長谷川さんや、ジャパンハートの創設者である吉岡先生のお話しを聞く時間も設けてもらい、とても充実していました。長谷川さんからは事業の経営を意識したより現実的な話が聞け、個人的にとても興味深かったです。吉岡先生は、短期ボランティア各々が質問をして、それに先生が答えていくという形式で、自分の知りたいことや、色々な深い話が聞けて良かったです。
ジャパンハートこども医療センターには成人病棟と小児病棟があるのですが、僕は主に成人病棟でボランティアをしていました。朝のミーティングの後、医療スタッフが入院患者を回診するので、そこで患者の病状、怪我の原因や治療を日本人看護師のスタッフから聞いて覚えました。患者は大抵、英語が通じませんが、自分が治療を手伝った患者とは、ジェスチャーや簡単なクメール語でコミュニケーションを取りました。そうしていると、一方的に自分が感じているだけかもしれませんが、友情みたいなものが生まれて、会うたびに挨拶をしてくれたりして嬉しかったです。
そんな中、自分の中で一番印象的な患者さんがいました。症状を簡単にいうと、腎不全によって体に水が溜まり、心不全も併発。さらに肺にも水が溜まり、呼吸も苦しそうにしていたおばあさんです。彼女はすごく苦しそうでした。僕が初めて彼女を見たときから、日が経つにつれてどんどん症状がひどくなっていくように見えました。先が長くないように感じられました。僕が来て3日目の昼、おばあさんは家族と一緒に病院を去って行きました。治療を中断して、家に戻ったのです。スタッフの中には「最後まで医療を提供できなくて悔しい気持ちもある」と言っている人もいました。彼女が故郷で最期を過ごしたいと願ったとのことなので、彼女を帰らせた判断は正しかったと思います。彼女の死を近くに感じながら、僕は、治療法がある病気でも経済的理由で高度な治療を受けることが難しい患者さんの気持ちを尊重することの難しさを高校生ながら感じました。
長崎県青雲高等学校 秋吉 友貴