カンボジアからこんにちは。
先日ジャパンハートカンボジアの連携病院であるロカカオン病院で5日間の手術活動(以下ミッション)を行ってきました。
日本からは外科の先生お2人、手術室看護師さん、外科病棟看護師さんの4人のチームで来て頂きました。チームワークが抜群でとてもいい雰囲気でミッションをすることができました。
昨年5月から本格的に連携病院でのミッションを始めたのですが、その最初の病院がロカカオン病院です。久しぶりに訪れたロカカオン病院で、病院のアイドル的存在(わたしにとって)のサリーちゃんに出会いました。あの頃と変わらず笑顔で出迎えてくれました。
サリーちゃんは病院を掃除する仕事をしていますが、犬使いでもあります。
その犬に前回は付いていなかった首輪が今回は付いていました。サリーちゃんの飼い犬になったのでしょうか。サリーちゃんと手をつないでダンスをしたり飛び跳ねたりと、見事なコンビネーションを見せてくれました。
そんな素敵なサリーちゃんのいるロカカオン病院での、5日間のミッションを1日目からご紹介します。
ミッション1日目!
5日間で手術を受ける患者さん全てにロカカオン病院へ来てもらうように事前に話をしています。手術を受けるって人生の中で大きな決断で、手術を受けるその日に予定を合わせるのは日本ならみんなやっていることかなって思っていました。でも、ここはカンボジアです。日本の常識、またはわたしの常識はここでは通用しません。
事前に電話で初日に来て下さいねって話をした時は「行きますね!!」なんて言っていても当日来ないのは当たり前。
●電話をしても繋がらなかったり、
●家族の結婚式なので行けません(急にわかるんだねー)、
●他の病院で手術してもらいました(えっ、事前に連絡したときに教えて下さい、それとも連絡した後に手術を受けちゃったんですか?)、
●お母さんの体調が良くないので行けません(それは・・・大変ですねお大事に)、
●今は仕事中なので午後から行きます(お願いです朝から来てください)、
●今は手術しなくても調子がいいみたいです(あ~そうですか)
など来ない理由は様々です。仕方のない理由もあると分かってはいても、
「なんでかなぁ~、なんで来てくれないかな~、もう少し待っていたら来てくれるかな~」
毎回ミッションの時は同じことを思います。
そして、1日目は、午後から手術が始まり、終了後わたしたちは再び拠点病院であるジャパンハートこども医療センターへ帰りました。
ミッション2日目!!
午前7時30分、この日もロカカオン病院へ向け出発します。毎日これを繰り返します。
この日は車2台で移動しましたが、時には車1台で移動します。
約30分でロカカオン病院へ到着すると、わたし達の活動の噂を聞きつけて新しい患者さんが受診してきます。手術適応の患者さんであればできる限り手術をします。
そんな時、ロカカオン病院のスタッフから患者さんが紹介されてきました。その患者さんは1週間前からお尻に膿瘍があり、それが悪化して痛くて1人で歩行することができず両脇を抱えられて来ました。全身にじっとりと汗をかき、血圧も低く、朝から排尿が無いという状況の患者さんでした。おそらく敗血症性ショックであろうと思われました。お尻の膿瘍をきれいにしないとこの患者さんは改善しない、わたしたちは手術をする方向で考えます。
しかし、このような患者さんをここで手術した場合の不安もありました。
「術後管理はうまくいくのだろうか、術中に患者さんに変化があった場合対応できるのだろうか?」
そんな時1人のカンボジア人スタッフがわたしに言いました。
「ここで手術をしてもいいと思う、でも術後はジャパンハートの病院で診る方がいいと思う。」
その言葉でわたしは決断することができました。本来ならスパッ!と決断すべきところだったと思いますが決断力の無さを情けなく思います。
もちろんプノンペンの大きな病院へ搬送することも可能だったかもしれません。しかし患者さんはお金が無く、自己負担しなければならない救急車代20ドルも払えません。加えて、貧しい人に支給される「治療が無料で受けられるカード」も持っていませんでした。プノンペンへ行けば、さらにそこでの食事代なども必要になります。
わたし達はロカカオン病院での手術終了後、予定より早めにジャパンハートの病院へ帰り、この患者さんの手術を行うこととしました。わたし達が帰ってくるのをジャパンハート・スタッフが待ってくれていました。みんなの迅速な対応に感謝します。
ミッション3日目!!!
この日も患者さんが来ないというお馴染みの出来事が。初日に来て診察を受けているにも関わらずどうして来ないのか、患者さんへ電話をしてみます。4、5回目にやっと電話が繋がったと思ったら患者さん自身ではなく患者さんの家族でした。家族が言うには患者さんは2日間家に帰って来ていないのだそうです。事故にでもあったのではないかと心配しましたが、どこにいるかは分からないけど患者さんから家族に電話はあるとのことでした。
「そんなことってある?」ちょっとモヤモヤは残りますが無事ということならとりあえず安心しました。
ミッション4日目!!!!
この日、鼠経ヘルニアの手術を受けるために来てくれた患者さんは、術前にわたしに話をしてくれました。
「この手術をカンボジアの病院で受けるためには800ドルするんだ。
そんなお金はないから土地を売ってお金を作ろうと思っていたけど、
あなたたちが来たので土地を売らなくてよくなった。
本当にうれしい。」
(※カンボジアの田舎では1食約1ドルで食事をすることができます。)
こんなふうに言ってもらえるとロカカオン病院にミッションに来れてよかったなと思えます。
彼は術後の経過も問題なく退院することができました。
ミッション5日目!!!!!
5日目になってくるとみんな疲れが出てくるのではと思いましたが、みんな初日と変わらず元気です。
ボランティアで来て頂いたみなさんにも楽しかったと言って頂けて良かったです。
携帯で写真を撮ってそれを直ぐに現像し患者さんへ渡すというサプライズもして頂きました。患者さんは満面の笑顔です。
スタッフや患者さんとも打ち解けていたボランティアの皆さんとのお別れの時は毎回寂しくなります。そんなボランティアさんを見送り片づけをしていると、見覚えのある男性がやってきました。
「もう終わったの?帰るの?」
ミッション3日目に連絡が付いたと思ったら家に帰ってきていないと言われていた患者さんでした。
「無事だった!!」彼の姿を見て安心しました。
「どこに行っていたの?」
「ずっと家にいたんだよ」
「・・・・・?」
わたしは何のことだか理解できませんでしたが、話をしていくと家族が手術に反対していた為、来ることができなかったのだそうです。手術するために事前に必要な、家族の同意を得るのに時間が必要だったと言います。家族は術後の合併症を心配していた為、なかなか手術に賛成してくれなかったそうです。
医療に対しての信頼が無いから?人々に医療の知識が無いから?
もちろんどんな手術でもリスクはあります。それはカンボジアでも日本でも同じです。
2日目の患者さんのように、お金が無く医療が受けられない人もたくさんいます。
医療格差がなくなり、誰もが等しく医療を受けることができる国になってほしいと思います。
5日間は長いようで短かったミッションでした。
たくさんの人との出会いがあり、嬉しいこと悔しいこと悲しいことなど1つのミッションでいろいろな感情を呼び起こされます。
本格的に連携ミッションを始めてもうすぐ一年になります。何度ミッションをやっても初めてミッションに参加したころを思い出します。あの頃はすべて自分がしなければと思い、肩に力が入りすぎていて常に空回りをしていたように思います。そして、ミッションをするごとにたくましく成長していくスタッフをみて微笑ましく思っていましたが、今回はそんなスタッフの助言を得てわたしも成長させてもらいました。というか、1つ1つのミッションで自分も成長させてもらっていたんだなと思います。今はカンボジア人スタッフをリーダーにして彼女の成長を見守っています。
連携病院での医療活動はそこにいる現地のスタッフとも協力して行います。
想定外なことも起こります、それをみんなで協力して乗り越えていくから喜びや楽しみが生まれます。
みなさんも連携病院でのミッションに参加してみませんか。(サリーちゃんに会いに来ませんか。)
手術活動だけでなく、巡回診療に参加して頂ける方も募集しています。
▼巡回診療の活動レポートはこちら
https://japanvolunteer.org/report/cambodia_190208/
地域の病院へ行きカンボジアの人々と笑顔で会話してみませんか。言葉が通じなくても笑顔で会話できます。
▼3月開催予定はこちら
https://japanvolunteer.org/volunteer_schedule/
カンボジアでお会いできるのを楽しみにしています。
カンボジア在住看護師
藤井祐美子