認定NPO法人サイドバイサイドインターナショナル(SBSI)の佐々木明子さんよりお声をかけて頂き、 9月25日にカンボジアの社会福祉省での職員の方向けのBLS講習のお手伝いをさせて頂きました。
BLSとは”Basic Life Support”の略称。
その名の通り”人の命を支えるために最も基礎的なskill”です。
救命のためには
①迅速な119番通報
②迅速かつ質の高い心肺蘇生(以下CPR)
③迅速な除細動(以下AED)
④迅速な高度救命処置
⑤自己心肺再開後のケア
のいずれもが途切れることなく行われる必要があり、これを「救命の連鎖(chain of survival)」と言います。
<院外心肺停止における救命の連鎖;2015年アメリカ心臓協会ガイドラインより抜粋>
我々医療者の出番は病院に運ばれた④以降のことが多く ①②③を担うのは現場に居合わせた人、つまり誰もがその当事者となりえます。
BLSは主にこの①②③のことを指します。
そして、”連鎖”と言うように、①②③が途切れることなくつなげられなければ、病院に運ばれたとしても、その人を助けることはできません。
ドリンカーの救命曲線(添付写真参照)では
呼吸停止から4分で蘇生のチャンスは半分になり、
CPRが行われずに10分経つ頃には蘇生のチャンスは0%になります。
<ドリンカーの救命曲線>
実際、病院で働いていても現場に居合わせた人によるCPR(バイスタンダーCPRと言いますが)が行われないと、病院に到着しても助けられない事が多いです。
人の命を救うのは決して、医療者だけの力ではありません。
医療者が本領を発揮できるのも、みなさんがきちんとしたBLSを行い、医療者まで”つないでくれる”おかげなのです。
ぜひ今一度、自分自身も救急医療におけるチームの1人であるという自覚を持って、この最も基本的で、誰でも出来るスキルを身につけて頂きたいと思います。
そして、どれほど医療技術が発達したとしても
☆手洗い
☆うがい
☆歯磨き
☆あいうべ体操
に加え、今回お伝えしている
☆BLS
といった”基本”があって初めて医療技術は活きるんだとカンボジアに来て、日本にいた時以上に実感しています。
そして、その重要なポイントを担うのは、医療者でないことがほとんどです。 だからこそ、我々医療の専門家は患者さんを治すだけではなく、こういった”医療を行う上で大切なこと”を皆さんに教えていく役割を担っていると思っています。
もっと言うなれば、 理想的な将来像としては、医療者がわざわざ教えなくても、誰もが当たり前に理解し、行うことができ、そして、次の世代に伝えていけるようになることだと思っています。
医療者として日本やカンボジア、そして世界を少しでもその理想に近づけることが出来るように働きかけていきたいと思います。
内科医:進谷より