活動レポート

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【メディカルHR】日本手術看護学会×国際医療NGOジャパンハート 第1回勉強会開催

up 2025.03.27

カンボジア駐在の看護師 藤井です。
2024年12月にパートナーシップを締結した日本手術看護学会(以下JONA)による、第1回勉強会をカンボジア人スタッフに向けてオンラインで開催しました。

勉強会実施に至るまでの背景

2024年4月にJONAとプロジェクトチーム発足し、2024年5月にはJONAの山本千恵様、後藤紀久様がカンボジアのジャパンハートこども医療センターにいらっしゃいました。
5月はカンボジアでも酷暑の時期期ですが、とても精力的に手術室や病院の見学、ミーティングをされていました。

その後もJONAとは定期的にオンラインでミーティングを重ね、手術室のスペシャリストの皆様やカンボジアの手術室の現場をご覧いただいたお二方からのご意見などもいただきました。
毎回のミーティングでは、皆様の的を得たご意見や判断力の速さに驚かされています。
また、私も日本では手術室で働いた経験がありますので、こんな素敵な方たちと一緒にプロジェクトができることをとても嬉しく思っています。

手術室の現状

カンボジアの手術室の現状を少しお伝えします。
2020年、コロナパンデミックの影響で日本人がカンボジアへ渡航できなくなり、カンボジア人スタッフだけで手術室業務を行わざるを得ない状況になりました。
その結果、カンボジア人スタッフの責任感や自立心が芽生え、解剖や術式を理解し器械出しをする技術は上がってきました。

カンボジア人スタッフは手術に興味はあり、勉強熱心なのでスキルのみならず、さらにもう一歩、「看護」の観点を手術室に取り入れたいと思っていました。

「手術看護」の課題

カンボジアの「手術看護」について以下の課題があります。
カンボジアでは「外回り看護師」の役割が日本と異なります。
日本の外回り看護師は周手術期全般に関わり、手術の進行をサポートする役割を担いますが、カンボジアでは医師や機械出し看護師から言われたことを実施することが役割となります。

そのため、カンボジア人と働き始めた当初は術中の患者さんの体温管理や神経損傷予防、褥瘡予防等を気にかけて対応するスタッフはいませんでした。
また、患者さんの不安軽減や情報収集目的で、手術前に手術室看護師が患者さんのお部屋に伺ってお話をする「術前訪問」もありません。

これらの必要性や看護について、カンボジア人スタッフに長い年月をかけてトレーニングし、少しずつ理解して対応できるようになりましたが、まだ不十分なところがあります。

勉強会の様子

今回、JONAの方による第1回勉強会は「周手術期看護の概要」「器械出し看護師とは」「外回り看護師とは」というテーマで行いました。

勉強会の間、カンボジア人スタッフは自分が気になるスライドがあると、後で見返せるように自身の携帯で写真を撮るなどしていました。

そして、特に術前訪問に関する質問がありました。

「日本では術前訪問はみんなやっているのですか?」

「カンボジアでは手術日は忙しく、術前訪問は難しいと思います。日本ではどのように時間を作って術前訪問を行っているのですか?」

これらの質問にはJONAのミルズ会長からお答えいただきカンボジア人スタッフも頷いて聞いていました。
勉強会は英語での実施でしたが、英語が苦手なスタッフは勉強会後に資料を読み返すことで彼らの理解はさらに深まったようです。

また、「どのようにしたらここでも術前訪問ができるか?」という実施に向けた発言も聞かれました。

今までもカンボジア人スタッフに対して繰り返し術前訪問の大切さを伝えてきましたが、理解してもらうのは難しく実施には至りませんでした。
今回、JONAの方々からの勉強会を通して、術前訪問とはどういうものが改めて理解でき、興味を持ってくれました。
カンボジア人スタッフが抱き始めたこの興味・関心を途切らせず、実施できるよう引き続きサポートが必要だと強く感じています。

本勉強会実施にあたり、JONAの皆様には何度もミーティングを実施いただき、ご準備いただきました。
皆様の多大なるご協力があり実現することが出来ました。
カンボジア人スタッフにとっても手術のスペシャリストの方々から学べる機会は大変貴重だと思っています。
今まで以上に患者さんへ安全な看護が提供できるように、スタッフ一同頑張っていきたいと思います。

カンボジア看護師
藤井祐美子

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