国立病院機構岡山医療センターの中原康雄医師による集中的な手術活動が、2025年2月22日から25日にかけて実施されました。
長年にわたりジャパンハートの活動を支援している中原医師は日本とカンボジアを行き来しながら小児がんの手術を行い、現地医療者の育成にも尽力されています。
今回は集中的な手術活動の中で手術を受けた2人の子どもを紹介します。
1歳の男の子、チャイナくんはある日、家族が右腹部の腫れに気づき、病院を受診しました。
その結果、医師から肝芽腫の疑いを指摘されました。
肝芽腫とは、肝臓に悪性のがん細胞ができる病気で、小児肝がんの中で最も多く、3歳未満の子どもに発症します。
生検(組織を採取し、がんかどうかを調べる検査)の結果、チャイナくんは肝芽腫と診断され、抗がん剤治療が始まりました。
治療を続ける中で、医師から手術が必要であると告げられましたが、母親は1歳の小さな体への負担を心配していました。
しかし、同じ病気と闘う子どもたちやその家族の存在が支えとなり、家族は手術を決断しました。
手術当日、チャイナくんは朝から友達と動画を見ながら無邪気に過ごしていましたが、手術台に上がると不安な表情を浮かべていました。
5時間20分に及ぶ手術は無事に終わり、チャイナくんは集中治療室で慎重に経過を観察されることになりました。
戻ってきた息子を見たお母さんは安心した表情を浮かべ、「また家族で普通の生活がしたい」と話してくれました。
レケナちゃんは13歳の女の子で、腎細胞がんと診断されました。
最初は症状がなく、発熱をきっかけに近くの病院を受診しました。
診察の結果、左のお腹の腫れが見つかり、画像検査にて巨大な腎腫瘍と肺転移を指摘され、ジャパンハートに紹介となりました。
腫瘍が大きく転移もあるため、分子標的薬(がんやその他の病気の原因となる特定の分子を狙って作用する薬)の内服を開始しました。
外来通院で内服を継続しましたが、6か月後も腫瘍のサイズは変わらないため、中原医師と相談し、手術でお腹の腫瘍を摘出する方針となりました。
12時間以上におよぶ手術で、無事に2キロの左腎腫瘍とリンパ節転移を摘出しました。
手術後の経過は良好であり、分子標的薬を継続しながら、今後は肺転移部分の手術も考えています。
勉強が大好きだと話してくれたレケナちゃん。「退院したらすぐ学校へ行きたい!」と話す姿がとても印象的でした。
かつて、カンボジアでは医療従事者が不足し、医療への不安が大きかったものの、現在では医師の数も増え、医療教育の体制も少しずつ整いつつあります。
ジャパンハートでも、カンボジア人の医療スタッフがより多くの手術を行い、質の高い医療を未来へつなぐために教育体制を強化しています。
中原先生も学んできた技術を活かせるジャパンハートでの活動に大きなやりがいを感じてくださっているそうで、「自分の知識をより多くの医師に伝えていき、カンボジアの医療の未来につなげていきたい」とおっしゃってくださいました。
子どもたちのそばで見守る中で、改めて医療従事者の素晴らしさを実感しました。
高度な医療技術はもちろんのこと、子どもやそのご家族の不安に寄り添い、安心できる環境をつくることの大切さを感じています。
医療の専門知識がなくても、患者さんやご家族の気持ちに寄り添い、少しでも安心して治療を受けられるようにサポートしたり、私たちにできることはまだまだあると感じています。
ジャパンハートはこれからもより多くの人が安心して医療を受けられるよう、支援を続けてまいります。
学生インターン 小野澤 真由
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カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動