紙カルテ&ホワイトボードでの情報共有
日本の病院では、通信情報技術(ICT)の導入により電子カルテやタブレット等ですぐ必要な情報が入手でき、診療に関わる情報も端末機器で容易に操作できます。院内の決定事項などに関する事務的な連絡もスムーズに伝達されているように思います。
しかし、カンボジアの「ジャパンハートこども医療センター」ではICT技術は導入されておらず、患者診療情報は紙カルテとナースステーションに設置されたホワイトボードに記載された内容を、それぞれのスタッフが確認するというシステムとなっています。
また病院スタッフ全員や日本人スタッフへの連絡事項はスマートフォンの連絡アプリが使用されています。
今回、臨床検査部門から見た情報共有について報告いたします。
ミーティングについて
ミーティングは対面での貴重な情報共有の場として「ジャパンハートこども医療センター」でも多く実施されていますが、現在、定期的に行われているミーティングは以下の通りです。
●毎日午前8時 — 始業ミーティング
医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養管理士、広報スタッフ、学生インターン等が集まり15分程度で夜勤看護師より入院患者情報の報告。その日の化学療法患者の確認等が行われます。
●毎日午後5時 — 終業ミーティング
同様に15分程度あり、同じく日勤看護師より入院患者情報の報告があります。
●毎週金曜日 — オンコロジー(腫瘍学)ミーティング
入院病棟ナースステーションにて開催され、小児固形がん等での入院患者について1人ひとりの詳細な情報が共有され、その他出席の薬局、検査、栄養管理室、事務方より連絡事項があればその場でアナウンスされます。
●月1回 ― オールスタッフミーティング(土曜日)
各部門に分かれてのミーティングの後、全スタッフがカンファレンスルームに集合します。
各部門から報告があり全スタッフへ情報共有されます。
また不定期ですが、医師などによる症例及びレクチャーカンファレンスも行われ、スキルアップのために多くのスタッフが参加します。
検査の情報共有について
日常検査については、検査技師が顕微鏡などで確認した画像をスマホで撮影し、医師に直接報告するとともに、スマートフォンの連絡アプリを使って医師グループ全体にも画像とコメントを添付して結果を報告しています。
私が勤務していた日本の病院では電子カルテに顕微鏡画像を取り込むシステムがなかったため、私が担当していた細菌検査のグラム染色スライド標本で珍しい症例については、スマホで撮影後にコメント等を入れて加工したPDFを電子カルテに取り込んでいた経緯があり非常に時間がかかっていましたが、こちらではスマホさえあれば以前より時間短縮できるようになっています。
情報共有ツールとしてのスマホ
カンボジアの病院では、各自が保有するスマホが重要な情報収集及び発信源となっています。
検査についていえばほとんどの場合、スマホで撮影した画像とそのコメントによって情報共有を行っています。それ以外にも有効期限間近の輸血用血液パック情報や検査機器メンテナンスのための使用制限の情報などもスマホを活用して共有しています。
今後もスマホのさらなる有効利用を考え情報共有のためのツールとして役立てたいと考えます。
森三郎 カンボジア長期ボランティア / 臨床検査技師
2023年12月からカンボジアで検査技師として活動しています。40年間臨床検査技師として総合病院で勤務し、これまで経験した知識と技術を海外ボランティアという形で社会貢献できればと考えジャパンハートに応募しました。自身のスキルアップ、レベルアップに繋げていきたいと思います。
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カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動