皆さんこんにちは。ジャパンハートの研修制度「グローバル人材開発コース」の受講生としてカンボジアで活動している看護師の根釜です。
今回、カンボジアで医療活動を始めてから感じていた課題意識をもとに、術後の患者さんの回復をサポートするための「ワーキングチーム」を発足させることになりました。
なぜチームを組むことになったのか、詳しくお伝えします!
“付き添いの家族まかせ”だった術後の離床
カンボジアの「ジャパンハートこども医療センター」で活動を始めてから私が感じていた課題意識、それは「術後の離床が進んでいない」ということでした。
「離床(りしょう)」とは、介護や看護の業界で一般的に使われる用語で、寝ている状態から起き上がることを指します。術後すぐは出血などのリスクがありますが、一定の時間が経った後や安静解除後は、なるべく早く離床することが早期回復に繋がります。
私は主に成人の患者さんを担当しています。カンボジアに来て直ぐの頃は、カンボジアでは家族が入院に付き添って身の回りの世話をしているし、経済的に入院をなるべく短くしたいという患者さんも多いので、わざわざ促さなくてもきっと自発的に離床しているだろうと思い込んでいました。
しかし実際はそうではなく、例えばヘルニアの術後1日経過した患者さんでも離床できていないケースも少なくありませんでした。
背景には、患者さんの身の回りの世話や日常生活の援助は付き添いの家族が行うため、見方によっては「看護師が臨床場面に関わることが少ない」という現状がありました。また、患者さんが少しでも痛みや吐き気、めまいなどを訴えると、直ぐに離床をやめてしまうことも気になりました。
チームは発足したものの・・・
そこで、一緒に活動する日本人看護師の吉田さんと「早期離床」を促すためのワーキングチームを発足させることになりました。
ワーキングチームは早期離床チーム以外にもあり、「救急チーム」「情報通信技術(ICT)チーム」、「手術部位感染(SSI)チーム」、「ツアーチーム」に分かれて活動しています。
しかし、チームを発足させたは良いものの、最初はとても大変でした。
それぞれのチームがメンバー募集の呼びかけを行ったのですが、早期離床チームを希望したカンボジア人スタッフはなんと0人。
救急チームなどはすぐに人数が集まっていましたが、早期離床チームの活動は人数を集めるところから開始しました。
日本でも、救急は人気の分野です。どこの国でも救急は人気なのかなと思いました。
とはいえ、メンバーが集まらなければ何も始まりません。
そもそも「早期離床をサポートする」ということについて、看護師たち自身があまりイメージできていないのではないかと考えた私たちは、まず初めに早期離床はどういうものなのかを知ってもらうために、スライドを準備しました。
そしてカンボジアスタッフにプレゼンテーションを行いました。
早期離床とは何か、メリット、デメリット、離床風景などを取り入れて、「楽しく離床しよう」というコンセプトで、患者さんやその家族、スタッフみんなで離床しようということを目標にしました。
その結果、6名のカンボジア人スタッフが入ってくれ、遂にチームの活動が始まりました。
遂に始動!ゆくゆくはカンボジア人スタッフのみで
現在は、術後1日目の患者さん全員の離床を目指そうということを目標に取り組んでいます。
今後は勉強会などを開催して、離床について深めていき、根拠を持って離床することができるように取り組んでいきたいと考えています。
最近はカンボジアスタッフから「今日みんな離床させたよ」など、声をかけてくれることが少しずつ増えてきました。
また、カンボジアスタッフで運営、活動できるよう継続して行うためにはどのようにしたら良いのかも考えていければと思っています。
日本でも同じように、入院時から退院、退院後の生活について考えながら関わっていくことは大切なことです。
日本で経験したことも取り入れながら、カンボジアの生活背景に合わせた関わりが大切だと思います。
早期離床のワーキングチーム発足時のモットーとしている「本人、家族、スタッフ含めて楽しく離床に取り組みたい」という思いは大事にしながら、今後も活動を続けて行きたいです。
根釜 宏平 グローバル人材開発コース 看護師受講生 62期生
大阪府出身。6年間の看護師経験を経て参加。「生まれた国、環境によって満足した医療が受けられない境遇でも、子供たちが夢を持ち、生まれてよかったと思える環境をつくれるよう関わっていきたいです」
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カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動