活動レポート

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【Voices of Japan Heart】Vol.7 マイ看護師

up 2024.03.22

カンボジア人のマイ看護師。ジャパンハートの奨学金制度を利用して大学へ進み、看護師になりました。
「貧しい人たちに医療を届けたい」と人一倍熱い思いを持って働くマイ看護師に、ジャパンハートで勤務することになった経緯や仕事への思いを聞きました。

Q. 看護師を目指したきっかけを教えてください

私は南東部・プレイベン州にあるベトナムとの国境近くの村で育ちました。男ばかりの9人兄弟の5番目です。
交通の便が悪く、最も近くの病院でもバイクで1~2時間かかるような場所でした。

「医療を受けること」自体がとても難しく、実際に家族が体調を崩した時も近くに医療機関がないためにとても苦労しました。
また、距離が遠いというだけではなく、経済的にもハードルが高く、子どもの頃から「自分たちのように地方に住む貧しい人はどうしたら良いの?」と思っていました。

自分と同じような境遇の人たちに医療を届けたいという思いで、はじめは医師になりたいと考えていましたが、下の弟たちを支えなければいけなかったので、より早く大学を卒業して働き始められる看護師を目指すようになりました。

Q. ジャパンハートについてはどのように知ったのでしょうか

「看護師を目指すことを決めた」と言っても、大学に行くだけの経済的な余裕はありませんでした。そんな時に知ったのがジャパンハートの奨学金制度です。
幸運なことに私が通っていたプレイベン州にある高校「カンボジア-日本友好学園」はこの奨学金制度の対象校だったので、高校を通じてジャパンハートについて知りました。
こうして看護師になれたのはジャパンハートの奨学金制度のおかげです。

ジャパンハートはカンボジアで「夢の架け橋プロジェクト」という奨学金支援事業を実施して、医師や看護師を目指す高校生を対象に大学卒業までの資金援助を行っています。
https://www.japanheart.org/activity/medical-staff/yume-no-kakehashi.html

ほかの奨学金生たちと。前列右から2番目がマイ看護師

この奨学金制度を利用して首都・プノンペンにある「カンボジア健康科学大学」に入り、ジャパンハートの施設で他の奨学金生と共同生活を送りながら大学に通いました。
卒業後すぐに「ジャパンハートこども医療センター」で働き始めて、4年ほどになります。

Q. ジャパンハートの病院での勤務はいかがですか

とてもやりがいを感じていますし、家族も私がジャパンハートで働いていることを誇りに思ってくれています。

ジャパンハートの奨学金生出身のスタッフは学業期間の半分の年数、「ジャパンハートこども医療センター」で勤務することになっているのですが、私はその期間が終わった後もこの病院に残りました。
もちろん他の病院で働く選択肢もありますし、転職すれば今よりも良い待遇を受けられるでしょう。

ですが私がもっと待遇の良い別の病院に移ったとして、その病院は医療機関が近くにない患者さん、治療費を払えない患者さんにも医療を提供しているでしょうか。

私は「地方の貧しい人たちに医療を届けたい」という思いで看護師になりました。
ジャパンハートは赤ちゃんからお年寄りまで、全ての患者さんに無償で医療を提供しています。
医療資材や薬品を車に詰め込んで各地に医療を届ける「モバイル診療」も行っていて、ここが私の居場所だと感じています。

この病院では毎日学びがあります。ずっと先の将来のことは分からないですが、今はとにかくこの病院でより多くの患者さんの治療に携わり、他のスタッフにも自分の知識を伝えていきたいと考えています。

Q. 小児がんの患者さんの治療にも携わっていますが、どんなことを大切にしていますか

小児病棟で勤務するうえで、3つのことを心がけています。

まずは患者さんに最大限の治療を届けること。目の前の患者さんの病気を治すために、どう治療を進めていくのが良いのか、他のスタッフと密にコミュニケーションをとるよう意識しています。
日本人とカンボジア人が一緒に働いているので、「相手に分かりやすいよう明確に伝えること」がとても大切です。
日々、色々な課題が出てきますが、1人ひとりの気付きを共有しながらチームで成長していきたいと思っています。

そして、患者さんの経済状況をしっかり把握することも大事にしています。
この病院では医療費や食費は無償とはいえ、小児がんの治療は年単位で続くので家族の負担は軽くありません。
例えば1人親世帯で他にも小さな子どもがいる場合には、誰が入院に付き添うのか。3食の病院食以外にも水や消耗品の購入が必要ですが、その費用は出せるのかなど、患者さんそれぞれの事情をしっかりと把握した上でサポートするよう努めています。

最後に、患者さん家族の精神的なサポートも非常に重要です。

「子どもががんと診断された」

その事実に直面する家族や親族の精神的な負担はどれほどでしょう。
わが子が病気の痛みや抗がん剤治療の副作用で苦しむ姿、「この子を失うかもしれない」という恐怖。24時間付き添う家族や親族の負担は言葉では言い表せません。

看護師として、ジャパンハートのスタッフとして、私に出来ることは何かといつも考え続けています。

何よりもまずは病気、治療、そして今後の見通しについて理解してもらい、医療者を信頼してもらうことが大切だと思うので、丁寧なコミュニケーションを取るよう意識しています。

そして私自身もそうですがカンボジア人の多くは仏教徒なので、悩んだ時や苦しい時にブッダの教えからヒントをもらうことがあります。私もそうした仏教の教えを自分の言葉で伝えられるよう、日々勉強しています。

Q6. これからの目標を教えてください

看護師として患者さんにより良い治療、そして精神的なケアを提供できるよう、もっと知識を深めて周りのスタッフにも広めていければと思っています。

他の医療機関との協力関係もさらに深めていきたいと考えています。
私は貧しい患者さんに医療を届けたいという思いで看護師になりましたが、1つの病院だけで全ての患者さんに医療を提供することはできません。

ジャパンハートのスタッフが各地に出向く「モバイル診療」も続けていきたいですし、地域の診療所や他の医療機関とももっと協力関係を深め、ノウハウや技術を共有したり、役割分担をしたりして、より多くの人に医療を届けられればと考えています。

マイ看護師

カンボジア・プレイベン州出身。ジャパンハートの奨学金制度を利用して大学の医学部を出て看護師となった後、2019年から「ジャパンハートこども医療センター」にて勤務している。


▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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