カンボジアで学生インターンとして活動していた髙橋明日香です。
まだ右も左もわからなかった入りたての頃から始まり、多くの方の支えがあり、本当にたくさんのことを乗り越え、1年間の活動をやり遂げることができました。
嬉しいことも辛いこともたくさん経験したこの1年は、まさに私にとってがむしゃらに駆け抜けた1年でした。
ある少女との出会い
1年を振り返ると、もちろん楽しかった思い出もたくさん出てくるのですが、真っ先に思い浮かぶのは亡くなっていった子どもたちのことです。
特に、ある1人の少女との出会いが私のカンボジアでの活動に大きな影響をもたらしてくれました。
私が彼女に出会ったのは2月半ば、カンボジアに来てすぐの頃です。
彼女の名前はベスナ。「神経芽腫」という神経の細胞にできるがんと闘った10歳の女の子です。
第一印象は人懐っこい女の子。病室を覗くといつも満面の笑みで駆け寄って来て、言葉が通じない私にも色々と話しかけてくれました。
インターンとして活動を始めてまだ緊張でいっぱいだった私にとって、ベスナは太陽のような存在でした。
退院した後もフォローアップで病院を訪れるたびに、笑顔を見せてくれたべスナ。
しかし、彼女が体調を崩し夜間に病院を訪れるようになったのは、退院して少し経った頃のことでした。
私が気づいた時には彼女は個室に入院しており、素人目にも分かるくらいに衰弱していました。
しばらくして、ベスナがお家に帰ることになったと聞きました。最期の時を家族と過ごすための退院でした。
お家に帰る前に看護師さんが私をベスナの横に連れていってくれました。
「ありがとう、よく頑張ったね」
横たわる彼女にかけた声が届いていたかは分かりませんが、しっかりとお別れをすることができました。
一生懸命に生きようとしていたべスナを前に、私は彼女の元気だった頃の姿が、彼女の笑顔が目に浮かび、涙が止まりませんでした。
彼女が亡くなってからの日々は毎日のように考えてしまうほどに、本当に喪失感でいっぱいでした。
辛い治療を頑張ってきたとしても全員が必ず治るわけではなく、亡くなってしまう命もたくさんある。
だからこそ、闘病中だとしても子どもたちがワクワクして自然と笑顔になれる機会をもっと作りたい。その想いは彼女の死をきっかけにより強まりました。
彼女だけでなく、私のこの1年の活動中に亡くなっていった子たちがたくさんいます。
ご家族の方が辛くてしょうがないはずなのに、最後には「ありがとう」と伝えてくださいます。その言葉に私は毎回とても胸が張り裂けそうになります。
子どもたちの笑顔が、親御さんの優しさがあったから私はここまで活動を続けて来られました。私の方こそ子どもたちに、そして親御さんに「ありがとう」の気持ちでいっぱいです。
生まれてきて良かったと思える世界を実現するために
子どもたちの生と死を近くで感じる日々の中で、この子たちが自然と笑顔になれる時間を作りたいという想いは日に日に強まりました。
だからこそこの1年の活動期間中、私は小児病棟でのイベント運営に全力を注いできました。
それと同時に子どもたちが新しいものに触れるなかで、興味関心を広げたり自己表現したりする機会を増やそうと他のインターンと話し合い‘Friends’というプレ院内学級のようなものも始めました。
イベント立案の始まりは、カンボジア内にある動物園とオンラインイベントを実施した時の活動レポートです。
それを読み、動物園だけでなく水族館もできたら子どもたちは喜ぶのではないかと思いました。
カンボジアにはほとんど馴染みがない水族館、それならば日本の水族館と繋いだらどうだろうかと思い、一番に浮かんだのは美ら海水族館の存在でした。
それからというもの現在までに、美ら海水族館さんとは数カ月に1度のペースでイベントをさせていただいています。
水族館イベントだけでなく、1年の間に季節のイベント(夏祭り、ハロウィン、そしてクリスマス)やSocial Compassさん協力のもとアートイベントと本当に色々行ってきました。
1年を通してこの活動に精一杯取り組めたのは、子どもたちの笑顔があったからです。
何よりも嬉しいのは、イベントの中で子どもたちはもちろん親御さん、そしてスタッフまでも皆が楽しそうにしている姿を見られた時です。
子どもたちがワクワクしている顔を見るたびに、今度はどんなイベントを行ったらより一層盛り上がるかなと、常に私の頭の中は子どもたちのことでいっぱいでした。
そして、イベントやプレ院内学級を通して子どもたちの成長を見られた時は、この活動を続けていて良かったなと心の底から思います。
今までは子どもたちにお片付けをさせるのも一苦労でした。
しかし、Friendsを定期的に開催するうちに、何人かの子どもはこちらから声をかけなくても、自分で使い終わったものを私たちの元へ戻すようになりました。
また、アートイベントを重ねる中で初めは何を書いて良いか分からずに戸惑っていた子どもたちも、気づけば友たちと集まって絵を描くまでになっていました。
様々なイベントの計画から運営までを仲間と協力しながら、そして多くの人の力をお借りして行ったこの1年。
私1人では到底何もできませんでした。この場をお借りして協力してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
子どもたちの夢を育む一端を担えるように
カンボジアでの活動期間中、病院内の子どもたちと関わるだけでなく夢を追いかける高校生・大学生とも関わる機会がありました。
それはジャパンハートが運営する奨学金事業「夢の架け橋プロジェクト」です。
1年を通して奨学金制度にかける学生たちの強い想いを知ることで、私自身が夢と向き合う良いきっかけになりました。
夢を叶えるスタートラインに立つためにこの奨学金事業に応募した高校生たち、今現在奨学金生として朝から夜まで必死で勉強を頑張る大学生たち、そして奨学金事業があったから夢を叶えることができジャパンハートで働いている医師・看護師たち。
それぞれが抱える想いを聞く中で、彼らの自分の夢に対する思いの強さに、私も負けていられないなと良い刺激をたくさんもらった1年でした。
このプロジェクトに関わり多くの学生の想いを知れたことは私の中で大きな財産になりました。
そして、カンボジアで活動を始めて9カ月目には、私に大きな転機が訪れました。
それは1週間のミャンマー訪問です。ジャパンハートがミャンマーで運営を行う養育施設「ドリームトレイン」に1週間行かせていただきました。
そして、カンボジアでの経験を活かし、ドリームトレインで多くのイベント、そして日本語授業を行いました。
ミャンマーの養育施設運営に関わる日本人・ミャンマー人と話す中、「こういう仕事が私はやりたいんだ」と強く感じました。
子どもたちの夢を育むために様々な教育プログラムを創り出し、個々を大切にサポートを行なっているドリームトレインはまさに私が目指していたものと近いように感じました。
だからこそ、ここでの活動を通して今まで子どもたちの教育発展に関わりたいとなんとなく道を歩んできましたが、ミャンマーを訪れてより一層その思いが明確に、そして強くなった気がします。
2つの国での活動を通して改めて感じたことは、子どもたちの夢を育む一端を担えるようになりたいということです。
やはり、どんな状況であれ子どもたちには自分の夢を追いかけることを諦めてほしくないと思います。
どういう形で一端を担えるかはまだ分かりませんが、子どもたちからもらった良い刺激を最大限生かし、夢を追いかけ続けようと思います。
次のステップ
ほぼ丸1年をカンボジアで素敵な仲間たちと過ごし活動する中で、少しずつ明確になってきた、「子どもたちの夢を育む一端を担えるように、ドリームトレインのように教育支援だけでなくその子たちの人生の一部を見届ける仕事につきたい」という未来への道。
そして、将来について明確に考え始めることができたのは、活動への想い、将来のこと、真剣な話からくだらない話まで本当にたくさんのことを多くの人と話し、色々な考え方を吸収できたからです。
もう次のステップへと進むとき。
これから先まだ1年残っている大学生活の中で、ここで吸収したことを改めて振り返りつつ、自分ととことん向き合って少しずつ見えてきた未来への道を歩んで行こうと思います。
ここでの活動が終わってしまうと意識するようになってから、改めてこの国が、ここで活動する人々が、本当に大好きだなと感じる毎日でした。入院している子どもたち、親御さん、スタッフのみんな、そして外に出れば笑顔で話しかけてくれる地元の人。
カンボジアがもつ温かい空気に、そして多くの方の優しさに支えられ活動をやり遂げることができました。
最後になりますが、この1年カンボジアでの活動をサポートしてくださった皆様、本当にありがとうございました。
一回りも二回りも成長して、大好きなカンボジアに戻ってきたいです!
高橋 明日香(学生インターン)
2023年2月から広報業務に携わらせていただいている、学生インターンの髙橋です。応援してくださる皆様の想いとカンボジアにいる患者さんとを、広報を通じて繋げられるよう精一杯頑張ります。よろしくお願い致します。
▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動