こんにちは!栄養管理部の溝口です。
カンボジアの「ジャパンハートこども医療センター」では最近、離乳食期となる5~6か月の赤ちゃんの患者さんが一気に増えました。
このくらいの赤ちゃんは、ミルクだけでは足りず、とはいえ大人と同じ食事が食べられるほどには発達していません。栄養不良が起きやすく、世界的な課題となっています。
そこで栄養管理部の発案で、「離乳食」を適切にとってもらうことで栄養不良を防げるよう調理スタッフ、医療者、患者さんの家族に対して指導を行う「離乳食キャンペーン」を実施しました。
(カンボジア 栄養管理部部長 溝口喜子)
カンボジアの離乳食って? 調理スタッフ向け勉強会
まずは、離乳期の患者さんに対して適切なおかゆが作れるよう調理スタッフ向けに勉強会を行いました。
カンボジア政府が推奨する離乳食「ボボーカップクルックルーン」の作り方のおさらいを行いました。
ボボーカップクルックルーンは具入りおかゆという意味で、普段から朝食や間食でおかゆを食べる習慣のあるカンボジア人からすると大人と同じものにしてしまいがちです。
離乳食用のおかゆと大人の食べるおかゆの一番違うポイントは「調味料を使わないこと」。
どうして調味料を入れないかスタッフにクイズを出してみたところ「子供は味が分からないから入れる必要はない」との回答でした。
う~ん、残念。
答えはむしろ反対で、味覚が敏感だからこそ素材そのものの味を理解させるために味をつけない、腎臓が未発達で塩の排泄がうまくできないなどの理由があることを説明しました。
離乳食「ボボーカップクルックルーン」具材は全部小さく刻みます。
医療スタッフも離乳食を試食!
次は、医療スタッフに離乳期の栄養管理について学んでもらいました。
離乳食は治療・成長に必要な栄養を摂るだけでなく、食べることそのものを学ぶ時期であることを理解してもらいました。
患者さんの家族の中にはずっと同じ既製品の離乳食を与えてしまう人がたまにいます。
例え栄養的には問題がなかったとしても様々な食材を経験できず偏食に繋がることがあるため、病院の提供する離乳食を食べるようアドバイスしてほしいと伝えました。
最後にはボボーカップクルクルーンの試食もしてもらいました。
味のしないおかゆに「おいしくない」の反応を期待していたのですが、反応は「おいしい!スタッフの食事にでもだしてほしい!」と大好評。
どういうこと?と思い、私も味見をするとしっかり味がついていました・・・。
大人が食べると聞いて調理スタッフが気を利かせて味を付けてしまったようです。さすがプロ。おいしいものを食べて欲しかったようです。(苦笑)
最後は保護者にレクチャー
保護者にも離乳食の与え方について指導を行いました。
初回で食べないと嫌いなのだと思い込み、与えるのをやめてしまう親が多いのですが、食べない理由には様々な要因があり、回数を重ねると食べられるようになるケースが多いため、あきらめずに与え続けるよう強調しました。
また、親が一緒に食事することで食べ方を学んだり、食べる楽しさを感じたりして食べられるようになるといったように食べないときの赤ちゃんのサポートの仕方を伝えました。
こちらはソペア(Sopheak)。最初は口に入れた瞬間吐き出してしまっていましたが、徐々に1口、2口・・・と食べられるようになり、完食できるようになりました。
10ヶ月となり食べる力がだいぶついてきたため、指導の下で果物にもチャレンジしました。
離乳食キャンペーンの後、調理スタッフがミールラウンド時に離乳食を食べられた患者さんやその家族を褒める姿や、医療者からの「そろそろこの患者さん離乳食始めてみよう」というリクエスト、患者さん同室のお母さん同士で上手くいった食べさせ方を共有する姿をみることができました。
調理スタッフ、医療者、患者家族の三方面からのアプローチにより、栄養不良に陥りやすい時期の患者さんのサポートを強固にできるようになりました。
溝口 喜子 栄養管理部部長 / 栄養士
2022年6月からカンボジアで栄養士として勤務している溝口です。 大学卒業後は民間企業に就職しましたが、そこから管理栄養士養成校(大学)に入りました。給食提供・栄養教育を通じて多くの方の心と体の健康を支えられるようがんばります!
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医療支援 | カンボジア ジャパンハートこども医療センター 栄養管理部