カンボジアにある「ジャパンハートこども医療センター」では、現在、総勢100人以上の日本人とカンボジア人のスタッフが勤務しています。
それぞれのスタッフがなぜジャパンハートで働くことになったのか、そして、日々どのような思いで勤務しているのか、1人ひとりの“声”をお伝えします。
Vol.1 Dr. Yav Phoan（ポアン医師）
カンボジア人のポアン医師。
ジャパンハートの奨学金制度を利用して大学の医学部に進み、約3年半前から「ジャパンハートこども医療センター」で勤務しています。
専門医を目指すポアン医師に、ジャパンハートで勤務することになったいきさつや仕事への思いを聞きました。
ジャパンハートとの出会いを教えてください
私はカンボジア南東部のプレイベン州という農村地域の出身で、貧しい家庭で育ちました。
子どもの頃から将来は医療に関わる仕事がしたいと思っていましたが、大学に通うだけの経済的な余裕が無いことも分かっていました。
そんな時、通っていた高校で紹介されたのがジャパンハートの奨学金制度でした。
ジャパンハートはカンボジアで「夢の架け橋プロジェクト」という奨学金支援事業を実施して、医師や看護師を目指す高校生を対象に大学卒業までの資金援助を行っています。詳しくはこちら https://www.japanheart.org/activity/medical-staff/yume-no-kakehashi.html
他にもたくさんの希望者がいたので、奨学金を受けられるかどうかは分かりませんでしたが、自分が選ばれたと知ったときは本当に嬉しかったです。
あの時、ジャパンハートに出会っていなければ、医師にはなれていなかったでしょうし、今ここにはいないと思います。
医師を目指したのはどうしてですか
私には年の離れた姉がいて、私が子どもの頃、姉にはすでに子どもがいました。
確か私が15歳ぐらいの頃だったと思いますが、その子どもが病気で亡くなったんです。
当時は私も子どもだったので、何の病気なのかも理解していなかったのですが、病気だと分かってから亡くなるまで数か月ほどしかなかったと思います。
甥っ子が亡くなった後、「どうして亡くなってしまったんだろう」と、ずっと考えていました。
その頃から、甥っ子と同じように病気で苦しむ子どもを助けたいと考えるようになりました。
医師と看護師の違いも分かっていませんでしたが、子どもながらにとにかく医療の分野で仕事をしたいと思っていました。
「ジャパンハートこども医療センター」での勤務はどうですか
大学の医学部を卒業してすぐに「ジャパンハートこども医療センター」で働き始めて、3年半ほどになります。
医師としての駆け出しの頃は、変な表現ですが“空っぽ”という感じでした。
ずっと医学部で勉強していたので理論はたくさん知っていましたが、経験が全くなかったからです。
でも、ここに来てからは本当にたくさんの経験をさせてもらっています。患者さんを助けるために自分の力が役に立っていると感じる瞬間もあって、やりがいを感じています。
特に日本人の医師たちと働く時間は、貴重な学びの場です。
神白院長や小児科部長の嘉数先生は、知識も経験も、全て私たちに伝えてくれます。
何か分からないことがあった時はいつでも助けてくれますし、理論だけでなく「なぜそうするのか」という部分まで説明してくれるので、とてもありがたいです。
これからの目標について教えてください
もともと小児科に興味がありましたが、「ジャパンハートこども医療センター」に来て、小児外科や小児の腫瘍学の分野で専門性を高めたいと思うようになりました。
この病院では、手術室での経験を多く積むことが出来ます。
小児がんの手術は大変なものが多いですが、吉岡医師や松永医師、中原医師など、日本から来た小児外科医や外科医と一緒に働くなかで、私も経験を積んで日本人の医師たちに近づきたいと思っています。
どんな時に医師としてのやりがいを感じますか
ジャパンハートはカンボジアで唯一、小児の固形腫瘍を無料で治療している病院です。貧しくて医療費が支払えないという患者さんたちがたくさん受診してきます。
ただ、私たちの所に来る患者さんはごく一部です。
この国には費用が払えないために治療を諦めている小児がん患者が数多くいるはずですが、それがどれくらいの人数なのか、どれくらいの子どもが命を落としているのか、私たちには分かりません。
小児がんは難しい病気です。治療を始める前に、患者さんの命が長くないこと、場合によっては数週間先まで生きられないかもしれないと分かってしまうこともあります。
どんな手を尽くしても命を救えないと知ってしまった時、本当に胸が苦しくなります。
足に腫瘍が出来て歩けなかったり、呼吸が出来なかったり、食べ物を噛めなかったり。
小児がんと一口に言っても、色んな症状があります。私は医師として、1人でも多くの命を救いたいと思っています。
私自身も貧しい家庭の出身なので、貧しい人たちを救いたいというジャパンハートの理念に共感しています。
これからもジャパンハートの一員として、この国の人たちを救うために活動していきたいです。
ポアン医師
カンボジア・プレイベン州出身。ジャパンハートの奨学金制度を利用して大学に進む。医師免許を取得した後、2019年11月から「ジャパンハートこども医療センター」で勤務している。
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カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動
