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手術を終えて
3時間ほど経った頃、ようやく手術が終わったという知らせが入りました。
ジャパンハートこども医療センターには、24時間体制で治療を行える「集中治療室(ICU)」があり、ダラは経過観察のためにしばらくそこに入ることになりました。
手術は順調にいったのかな。
いつ麻酔から目が覚めるのかな。
居ても立ってもいられず様子を見に行くと、ダラはお母さんに付き添われてぐっすりと眠っていました。
全身麻酔だから、そんなにすぐには目覚めないよね。
そんな風に考えながら、私は少しだけ時間を置いて、また様子を見に行きました。
すると、今度はダラが起きていたのです。
さらに、ベッドからこちらに顔を向けて、けろっとした様子でいつもの笑顔を見せてくれました。
たくさんの管がつながれて、まだベッドから起き上がることは出来ませんが、私はそれまでの緊張が一瞬でほぐれて「ほっ」と溜息が出ました。
後で聞いたところ、ダラの手術は予定通りに進んだそうです。
まだ治療は残っていますが、抗がん剤治療で腫瘍を小さく抑え込み、手術で取り除くことができたということでした。
お母さんや友だちに付き添われ、穏やかな表情で過ごすダラ。
それを見ながら、私は自分のなかにそれまでに感じたことのない、あたたかい感情がわき上がっているのに気付きました。
子どもの闘病生活を支える家族の大変さは、私には想像もつきません。
それでも、ダラを見つめるお母さんの表情や、そっと頭をなでて布団をかけてあげる姿に、自分が幼少期に体調を崩した時に看病してくれた母の姿が重なり、心があたたかくなりました。
我が子を思う親の気持ちほど強いものはない、そんな風に感じました。
初めての涙
数日後、ICUで順調に回復したダラは、もとの病室に戻りました。
再び友だちに囲まれて、もう、嬉しくてたまらない。
そんな様子で服をめくりあげてお腹に残る手術の傷を見せたり、点滴がつながっているのも忘れて歩き出そうとしたり。
見ているこちらはヒヤヒヤしますが、病室全体が笑顔に包まれていました。
そして、手術の後、私にとって嬉しい出来事がありました。
ダラが初めて涙を見せてくれたのです。
理由は些細なことだったようですが、目の前で大泣きするダラ。
治療中もジッと1人で耐えていたダラが初めて感情を爆発させてくれて、ほっとしました。
まあ、大泣きした直後にお菓子をもらって、けろっといつもの笑顔に戻っていましたが。
手術から1か月以上が経った今、ダラは元気に走り回れるほどに回復しました。
がん細胞を完全に退治するため、ジャパンハートこども医療センターに入院しながら、設備がある別の病院に通って放射線治療を受けています。
病院全体が特別な空気に包まれる、集中的な手術ミッション期間。
これからもミッションを通じて大きく変化する患者さんやスタッフの姿、「病院の今」をお伝えします。
高橋 明日香(学生インターン)
2月から広報業務に携わらせていただいている、学生インターンの髙橋です。応援してくださる皆様の想いとカンボジアにいる患者さんとを、広報を通じて繋げられるよう精一杯頑張ります。よろしくお願い致します。
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