活動レポート

← 活動レポート:トップへもどる

言語だけじゃない

up 2022.02.22

「クメール語話せていいですね。」
よく新しい日本人のスタッフさんやボランティアさんがここカンボジアに来られると大抵同じことを言われます。
が、私としては「全然よかないよー。まだまだ充分に話せてないと思っているし、もし仮に話せてたとしてもそれだけでうまくいくわけではないですよー。」と言いたくなります。

確かに海外で働く時に必要なスキルとして言語は重要であるとは思います。
実際私が働いているここカンボジアにある病院では英語が共通言語として使われています。カンボジア人スタッフと日本人スタッフが一緒に働いているからです。
基本的にはミーティングやカンファレンス、カルテ書類などの記載等は英語です。

ですが、患者さん家族はもちろん英語はまず話せませんし、クメール語(カンボジア語)しか話せないのが一般的です。
中には話せはするもののクメール語の字が読めない人もいますしこれは珍しいことではありません。スタッフでも英語に苦手意識を感じているのは私も含めてたくさんいます。

と、ここでの言語事情について説明してみましたが、何が言いたいかといいますと、「言語」はコミュニケーションにおいて重要ではあると思いますが、全てではないということです。

大事なことは
“相手を理解しようとする姿勢に妥協しないで真摯であり続けること”
“相手にリスペクトを込めた上で相手の全てが分かることはできないということを理解すること” だと思います。
2つのうち1つでも欠けたら相手との信頼関係は築けないし崩れる、と私はここカンボジアで学ばせてもらい、今改めて心に留めたいなと思っています。

例えば、言葉がなくとも日々患者さんに会いにいくことだけでも「あなたを大切に思っていますよ、気にしていますよ、心配していますよ」というメッセージは伝わると思います。
会いに行くだけと思われがちですが案外それをちゃんと続けることって難しいことです。
それでも続ける真摯な姿勢は相手を理解すること、そして理解してもらうことに影響しますし、これをこつこつ積み上げることでしか築き上げれない信頼関係って絶対あると思うんです。

言葉に関しては、最初から話せる人なんていませんし、努力なしでは一歩も前に進めないと思います。
一日一個でもいいからこつこつ覚えていけば時が経てばいつの間にか話せるようになっているかもしれません。
実際、私も初めてここへ来た時は英語もクメール語も絶望的でした。未だに苦手意識はありますが、時が経ち、なんとかここまで少しは話せるようになったなと思っているところです。

では、こういったこつこつした姿勢を続ければいつかは相手のことを“わかった”というところまで行けるかというとそうではないと思います。
よくやりがちなことだと思うのですが、私たちは「この人はこういう人であるに違いない、こう考えているに違いない、こうしたいはずだ」と自分が持っている情報や経験を元にもはや無意識に相手のことをなにかと決めつけたり、勝手にカテゴリー化してしまいます。

もちろん、相手の気持ちや立場にたって考えたり、想像して、自分がどう振舞うべきか吟味すること自体はいいと思います。というか必要なことです。
目の前のカンボジアの人々がどんな風に暮らしているのか、どういう背景を持っているのか、どうなっていきたいと思っているのか、、、。

でも、残念ながらそれらを完全に分かりきることって絶対にできないんですよ。
目の前の患者さんや家族や現地スタッフにはそれぞれに違った背景や価値観があって当然でその深さったら、たかがある時間をここで一緒に共有しただけで、たかが少しのクメール語が話せたからって分かり切るなんてこと絶対にないんです。

だからと言って相手を理解しようとすること自体を諦めるとか突き放すということではなくて、だからこそ!それだけ奥深く尊いものなのだということを理解した上で真摯に向き合い続けることが大切なのだと思います。

なので、言語は話せるにこしたことはなく間違っても不要ではないですが、全部ではないです。分かるための1つの大事なものといったところでしょうか。

最近、カンボジア人スタッフが私のことをたまに「ちぇみ」と呼んできます。「ちぇ」は年上の人の愛称みたいなものらしく、「み」が私の名前の短縮版ですね。極端に略されてますがなんだか気に入ってます。なんなら「み!」と呼ばれることも。
こうなってくるともうなんでもいいです(笑)

私のようなクメール語と英語がごちゃまぜの言葉を話すなんだかよくわからない日本人看護師がここでどれだけ受け入れてもらえてるかはわかりません。
でも少なくともオリジナルを持って認識はされているようなので、言語以外のところを絶対に怠らずに一生懸命でも謙虚に過ごしていきたいと思います。

看護師 松見瑛莉子

▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援| カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

Share /
PAGE TOP