輸血用の血液製剤が慢性的に不足しているカンボジア。
新型コロナウイルス感染の世界的流行により、さらに国内の献血者が激減している状況です。カンボジアの国立献血センターは、十分にドナーを集められず、窮地に立たされていました。
一方、ジャパンハートこども医療センターはコロナ禍でますますたくさんの小児がん患者さんを受け入れるようになりました。それに伴い、そんな輸血確保が難しい社会的状況の中であっても、より多くの輸血を準備する必要がありました。
そんな背景もあり、2021年1月、ジャパンハートの病院の一角で国立献血センターと協力し、献血イベントを実施しました。昨年夏に実施以来、2度目の開催でした。
当日は、目標50名に対して70名もの献血協力者が会場に訪れて下さいました。結果的に51名※の方が献血して下さいました。
※カンボジアの献血者に対して求められる体重、血圧、ヘモグロビン濃度等の基準値は日本よりも厳しく、残念ながら献血できなかった方が19名いらっしゃいました。
献血して下さった方は、当院に入院する患者さんのご家族、当院で治療を受けたことのある患者さん、病院職員やその家族など、ジャパンハートとゆかりのある方から、たまたまフェイスブックで献血イベントを知り駆けつけて下さった方、たまたま飲料水納品のために病院に来ていた業者の方まで多くの方にご協力頂きました。
特に印象的だった献血者が2名います。
1人目は、どうしても献血がしたいと病棟から出て来てくださった、患者さんのお父さん。
既に4歳の息子がリンパ腫のため4か月前から入院していて、ずっと一緒に闘病生活に寄り添っています。
病院スタッフからは、「もう既に目標人数が集まっているし、他の患者さんのために別途、献血の依頼をするタイミングがあるかもしれないから、今回は無理に献血しなくても大丈夫です」と伝えたのですが、お父さんの
どうしても献血をして、この活動に貢献したい、
という確固たる想いは変わりませんでした。有難く、献血して頂くことになりました。
献血を終えたお父さんは、本当に嬉しそうな笑顔で息子のもとへ戻っていきました。
もう一人印象的だった献血者はジャパンハートの事務職員です。今回の献血イベントの集客から会場設営など一生懸命に携わっていました。
実は、彼女は生まれてから一度も献血をしたことがありませんでした。
血をとられることに慣れておらず、前回は検査のため少量採血した時点で、顔が真っ青に、手指も冷たくなってしまったため、献血することを断念していました。
あれから、何度も献血したいと言ってくれていましたが、みんなが彼女の体調を心配し、行えずにいました。
「今日こそは」と、緊張した面持ちで献血者向けの事前アンケートに長い時間かけて慎重に回答し、「無理しなくていいんだよ」と言う、あらゆる人からの声を退き、事前検査も無事に終え、遂に献血をすることができました。
献血に臨む緊張感の度合いが普通の人と一線を画していましたが、一生懸命な姿が、見ていてなんともいとおしい気持ちにさせられました。
カンボジアでは、一般的に献血に対して、ネガティブな言い伝えが信じられ、積極的に献血をしたがらない、だからカンボジア国内ではずっと輸血が不足している状態が続いていると聞いていました。
しかし、今回のイベントを通して出会ったカンボジアの方々はみな、献血後、充実感漂う素敵な笑顔で帰っていきました。
多くのカンボジア人の心の温かさに触れた素敵な献血イベントとなりました。
ジャパンハートカンボジア広報担当 中村
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