ジャパンハートこども医療センターでは現地のカンボジア人医療者を育てるだけでなく、ミャンマー人医療者にとっても研修の場を提供しています。
ミャンマーの医療活動拠点であるワッチェ慈善病院で3年以上勤務しているHkara(カラ)さんは、同僚が昨年カンボジアで研修を受けた話を聞き、今まで見たことのない疾患を見てもっと勉強したいという気持ちでカンボジアでの研修に参加しました。
ワッチェ慈善病院では、外科系疾患の治療をメインで行っています。治療を受けた患者さんの多くは1週間前後で元気になって帰っていきます。一方、カンボジアでは長期の入院をしている患者さんがいて、必ずしも全員が元気に退院していくわけではありません。カラさんは、そんなミャンマーで見てきた病気とは異なる病気をどのようにケアするのか知りたかったそうです。
始めは異国の地で看護をすること自体が不安だったそうです。実際に勤務を始めると新しい知識が広がっていきました。
「たとえば、化学療法の副作用。その副作用に対してどんなケアをするべきか、ひとつひとつが学びでした。」
(小児がんの患者さんにケアを施すカラさん)
カラさんがカンボジア滞在期間中に看護師という仕事への向き合い方を考えるきっかけとなったのが、ある小児がん患者さんでした。カンボジアに来て2か月がたったころ、ずっと面倒を見ていた小児がんの患者さんの全身に腫瘍が転移してしまいました。
「ある朝病院に来てみると、いつもその患者さんのバイタルサインを確認していた遠隔モニターの表示がなくて、申し送りのホワイトボードにも名前がなくなっていて。その時、はじめて昨晩あの子が亡くなったんだと分かりました。」
初めて、病院で小さな命を失うことを経験しました。
(入院中の患者さんの治療状況を確認するホワイトボード)
「今回はその瞬間に居合わせることはなかったけれど、そんなとき看護師として、どう対応すればいいのだろう?と今まで考えたことがなかったことを考えるようになりました。」
この3か月の期間を通じて、「看護師としてもっと勉強が必要だと感じました。患者さんの急変時にも対応できる看護師になりたい、そう思いました。」
「今まで急変した患者さんへのケアなど、分からないことはつい先輩看護師に頼っていました。でもミャンマーに帰ったら、今度は自分がやらなければと思います。」と、より高いモチベーションで看護にあたる決意を見せていました。
1月中旬で看護師カラさんはミャンマーに帰りますが、入れ替わりで新しいミャンマー人看護師が3か月間カンボジアで一緒に活動します。
今後も引き続き、ジャパンハートはミャンマーとカンボジア人医療者と一緒に成長していきます。
ジャパンハートカンボジア 中村