昨年の2018年に初めてトヨタ自動車株式会社と協働し、TOYOTA KAIZEN MOVEMENT プログラムを実施しました。
(第一回目の様子はこちら)
2回目となる今年は、3名のトヨタ自動車の社員様に約1ヶ月間病院に滞在してもらい、活動して頂きました。
今年は、主に昨年のプロジェクトに引き続いて、
1. 診療までの患者の待機時間の削減
2. レセプション(受付事務)の業務平準化
3. 当院と隣接する連携病院(公立ポンネルー病院)の改善
の3つをテーマに設定しました。
現地スタッフが自ら課題を認識し、問題解決ができるようになることを目標に。
将来ジャパンハートこども医療センターがカンボジア人中心となって運営できるようになるため、現地スタッフ自ら進んで改善し続けられるようになることを目標に定めました。
昨年のプロジェクトで学んだ知識を基に、本プロジェクトでトヨタ社員が当院で活動を開始する前から、現地非医療者である病院管理支援部門のチームを中心に、より患者さんの負担が少なくなるために課題発見・解決・改善を行いました。
実際にトヨタチームの皆さんと一緒に活動が始まると、現地スタッフとトヨタチームが一丸となって、これまでの現状・課題の共有と、各テーマに沿った解決方法の模索と議論をしているのが印象的でした。
トヨタ式の活動のはじまりには必ず人からの話だけでなく、自分の目で問題を探します。
KAIZEN点を見つけるためには、実際に患者さんがどのくらい待つか、実際に患者さんについていき、自らの足で情報を集めます。時に半日でもじっと患者さんの動きを確認します。
病院内で迷子にならないためのプロジェクトの事前調査では、ポンネルー病院からジャパンハートの病院までの道のりをひたすらについていきます。ときには、全く別の場所に行ってしまっても患者さんに正しいルートを教えたくなるのをぐっとこらえて、ひたすらついていきます。
本プロジェクトでは、先の3つのテーマに沿って、具体的には4つのことを実施しました。
・ジャパンハートの連携病院である公立ポンネルー病院とジャパンハートこども医療センターとの100mの間に5色の誘導線作成
・ポンネルー病院のカルテ整理
・受付の業務指示書の作成
・成人病棟の患者動線の改善 を行いました。
現地スタッフも一緒に考えたことが、ひとつひとつ形になっていくにつれ、このプロジェクトが面白くなり、自発的に動き始める様子が日に日に増えていきました。沢山の医療スタッフからも事務スタッフが以前より楽しそうに仕事をしていると聞きました。
学んだことは、【できない とは言わない、思わない、思わせない、諦めない】
この2年間、病院の管理診療支援部長として、実際に一緒に活動させて頂きながら、私はトヨタ生産方式 (Toyota Production System、以下TPS)が、何を重視して、どのような方法でプロジェクトを進めているかということを学ぶことができました。特に一番の学びは、TPSは手法や経験が重要なのではなく、わずかな変化を起こすためにどんな大変な思いをしても信念を持ってやり通す力だとわかったことです。文字に書き表すと至極当たり前のことのように見えますが、限られた時間の中でわずかな小さな変化(進歩)のために、泥臭く、課題の本質を理解するためにぎりぎりまで時間をかけ、解決策を見出すことがTPSの本質ではないかと感じました。
はじめは「できない、費用対効果が悪い」と思ったことであっても、実際に一つ一つ絡んだ問題を解きほぐし、「絶対に解決してやろう」という意思こそがKAIZENには欠かせない要素ではないかと理解できたことは、これからの私の仕事の仕方に大きく変化を与えてくれる要素になったと感じています。
まだまだ病院には解決すべき課題はたくさんあります。長くいるが故に見えない課題は更にたくさんあると思います。ただ、今回のプロジェクトの成果に満足せず、私と一緒にその課題と戦ってくれる現地の仲間とともに、より患者さんにとって優しい病院となれるよう、今の気持ちを忘れないようにしようと思っています。
最後になりますが、本プロジェクトで各方面へご調整していただきました皆様に感謝申し上げます。このような素晴らしい機会をいただき、誠にありがとうございました。
昨年のプロジェクト終了後フォローアップとして何度も足を運んでいただき、難しい局面に対峙した時に仕事と関係なく幾度となくアドバイスをしてくださったToyota Daihatsu Engineering & Manufacturing Co., Ltd.の西川副社長はじめFolk様・Anne様・Bow様、
このプロジェクト実施に際し、幾度となく現地まで来てくださり、私達と一緒に汗だくになりながら調整してくださいました藤田様、岩﨑様、小川様、内山田様、
実際に1ヶ月以上の期間、私達とともに活動をしてくださいました隅田様・森様・林田様、
TOYOTA CAMBODIAの伊藤様、Theavy様、
私にとって誰一人として欠けては成し遂げられなかったかけがえのないプロジェクトでした。
このプロジェクトに参加できて幸せでした。
ありがとうございました!
またお会いできること、現地スタッフともども首を長くしてお待ちしています。
ジャパンハートこども医療センター
管理・診療支援部長 山下裕由