スースダイ!こんにちは!
さっそくですが、みなさんはこの写真を見てどう思いますか?
点滴を木の棒に吊るしている写真です。カンボジアではごくごく普通の光景で、これは紛れもなく日本と同じ時代を生きるカンボジアの今です。
さあ写真のことは後程にしておいて、私は今ジャパンハートこども医療センター(以下:JHCMC)からさらに車で2時間ほどのところにあるチャムカルー病院というところに来ています。
期間は2カ月、副院長先生の自宅にホームステイさせてもらっています。ジャパンハートの仲間はいませんし、もちろん日本人も私一人です。通称「一人っ子」と呼ばれています。過去には今JHCMCで勤務する助産師の菊地さんや、看護師の藤井さんもここで一人っ子をされていました。私は少し期間があいて、久しぶりにこのチャムカルー病院で一人っ子を受け入れていただきお世話になっています。どんな病院かと言われるとカンボジアの田舎の病院、日本でいうと市民病院といった感じでしょうか。さきほどの写真もここで撮ったものです。
JHCMCで働いている中で、日々驚かされることはあります。しかしここにきてさらに驚きの連続です。カンボジアの医療のこと、患者さんのことをどれだけ知らなかったか、知ったつもりになっていたか痛感しています。
例えば、日本で病院を受診して「入院しましょう」と言われたとして、そのあと看護師さんにこう言われたらどうしましょう。
「今患者さんがたくさんいて入院するベッドが足りないので床にゴザを敷いてもらえますか」
「点滴が無くなったら、この新しい点滴ボトルを渡しておくので自分で換えてください」
「えーっと、点滴をぶら下げる点滴台が無いので高い位置で持っててください」
ちょっと衝撃的かもしれませんね。私も最初に思い浮かんでしまうのは
JHCMCだったら、、、
日本だったら、、、
というものでした。
しかしこの考えにストップをかける自分がいます。いつもこう思ってしまったときにはなぜか頭の中にこの言葉が出てきます。
「待て待て早まるな」
日本と比べたり、何が正しいと評価しにここに来たのではありません。なぜならここはカンボジアだからです。医療者はみなさん患者さんのためにと働いていることには変わりはないと思います。患者さんも病院に来て治療が受けられて本当に素敵な笑顔が見られます。カンボジアでは家族は常に入院中の患者に献身的に付き添っています。カンボジアは人と人との距離が近く、それは家族同士、患者さん同士、医療者と患者さんもそうです。すごく支え合います。このあたたかさはカンボジアの医療の強みと私は思います。
そう思うと最初の写真も少し見え方が少し変わります。
点滴が木の棒に吊るされていても点滴はちゃんとつながり患者の体には入ります。
そんなことより、この家族もあったかくて素敵だなと私は思います。時には患者さん同士仲良く一つの点滴台を一緒に使う光景も見られます。
ゴザを敷いて家族一緒に寝るのもカンボジアではごく普通のことです。
早まらずにここはカンボジアと思えた時に、さきほど述べた、カンボジアの医療の強みは「人のあたたかさ」だとわかりました。
そうするとあるエピソードを思い出しました。
JHCMCで小児がん患者のご両親への病状説明の時のことです。その説明内容はご両親にとってとても苦しい内容でした。お母さんは泣き崩れ説明が終わってもずっとその場で泣いていました。私たちスタッフも背中をさすりお母さんに寄り添いました。そこにやってきたのは別の小児がん患者のお母さん。泣いている姿ですべてを悟り、抱きしめた後、「さあ行くよ」といつも通り市場へごはんの買い出しに引っ張りだしたのです。肩を寄せ合いながら歩いていくお母さん二人の後ろ姿は今も鮮明に覚えています。これ、本当にすごいことだと思います。私たち医療者にはできない心のケアです。カンボジアの患者同士のあたたかさでないとできないことと思います。
このあたたかさに私たちも助けられていると再認識しました。
この一人っ子はまだ1カ月以上続きます。カンボジアのいいところもっと知っていきたいと思います。