ミャンマー口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクト

患者のQOL*向上を実現するため
ミャンマー政府と連携した総合治療システムを構築

ジャパンハートミャンマーでは、2019年から「口唇裂・口蓋裂(こうしんれつ こうがいれつ)」総合治療体制援助プロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、年間1,000例ほどあると推測されるミャンマー国内の口唇裂・口蓋裂の新生児および家族に対し、出生直後に実施する家族へのカウンセリングや哺乳指導、乳幼児期の矯正・手術・言語訓練、社会生活に適応させるための成人期までのサポートを計画的に実施します。実施にあたっては、ジャパンハートが日本の医療者と、ミャンマー政府と連携して、総合治療システムの構築、治療を担う医療従事者の育成、各地での総合医療センターの設置を進めていきます。

*QOL(Quality of Life)…一人ひとりの人生の質や生活の質のことを指し、生きる上での満足度をあらわす指標の一つのこと。

そもそも口唇裂・口蓋裂とは?

口唇裂・口蓋裂とは、口唇(くちびる)、口蓋(くちの中の天井)、上顎(はぐき)が裂けた状態で産まれてくる新生児の病態をいいます。お母さんのお腹の中で体が形成される際、組織がうまく癒合しない事で裂け目ができてしまうのです。

日本でも500~600人に一人の割合で口唇裂・口蓋裂の子どもが出生していますが、すでに治療体系が確立されているため、ほぼ機能回復が見込める疾患とされています。
一方、ミャンマーでは専門医や情報の不足、経済的な問題などにより、治療を受けられない、または治療を受けても機能が回復しないまま成長するといったケースが数多く存在しています。機能が回復しないことで、発声がうまくできなかったり手術痕にコンプレックスを抱いたりして進学や就職を諦める、歯並びや噛み合わせが悪く摂食障害を発症する…など、社会生活や健康への影響が生じます。

ミャンマー口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクト

口唇裂の患児(左)、口蓋裂の手術を行っている場面(右)

プロジェクト開始の背景

ジャパンハートは、2004年の団体設立当初からミャンマー国内で口唇裂の手術を数多く行ってきました。2016年からは、ミャンマー国内の政府系病院にて、現地の医師たちと共に手術及び技術指導を実施しています。ここ数年は、欧米系の医療団体による口唇裂・口蓋裂の手術もミャンマー各地で実施され、手術の件数は国全体で増加傾向にあります。

しかし、私たちはこれまでの活動の中で、手術を受けたものの機能回復がされず苦しんでいる患者にも多く出会ってきました。彼らのQOL(生活の質、人生の質)を考慮すると、手術だけで十分とは決して言えません。そこで、出生直後から成人に至るまでの一連の治療をするための体制構築の立案に至ったのです。

プロジェクト概要

プロジェクトは大きく5つの目標を軸に活動していきます。

【1】総合治療体制のシステム作り
当プロジェクトでは、患者の出生直後から成人に至るまでの「カウンセリング⇒術前矯正⇒言語訓練⇒手術⇒矯正治療」といった一連の治療を各保健機関が連携して行うシステムを作ります。

【2】総合治療センターの設置
ミャンマー各地の病院内に口唇口蓋裂総合治療センターを設置して、患者がアクセスしやすい環境を作ります。

【3】医療人材の育成
看護師・助産師・歯科医師・言語訓練士・コーディネーターの各職種に対し、講習を実施して必要とされる知識や技術の習得をサポートします。研修センターの設置や、来日研修も実施する予定です。

【4】口唇裂・口蓋裂手術の実施
現地医師のみで口唇裂・口蓋裂の手術が実施されていない地域を中心に手術活動を試み、協力病院を増やしていきます。

【5】患者の把握
患者が出生した際の報告ルートを確立して、適切な時期に治療できる環境を作ります。

ミャンマー口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクト

日本の専門科を招いた医療人材に向けての研修がスタートしている

プロジェクトメンバー

プロジェクト統括:河野朋子(看護師/ジャパンハート)
プロジェクト専属専門家:岸 直子(口腔外科医/ジャパンハート認定医)
日本国内提携団体:大阪大学大学院 歯学研究科口腔外科学第一教室 古郷幹彦 教授
現地提携団体:ミャンマー保健スポーツ省

ミャンマー口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクト

医療人材向けの講義が終了後、ミャンマー保健省責任者と大阪大学医療チームとミャンマーの受講者と共に

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